宿泊税とは、ホテルや旅館などで宿泊をすると発生する税金です。出張で宿泊した際に「ホテ代は予約時に支払ったけど、さらに宿泊税もかかるの?」と驚かれる方もいるでしょう。今回は宿泊税についてご紹介します。
私たちの生活の中には、所得税、住民税、消費税など様々な税金があります。宿泊税は「地方税」に分類され、地方自治体が徴収する税金です。地方自治体が地域の魅力を高める目的や、観光地を守ることを目的として、宿泊税を導入しています。
宿泊税は2002年から始まりました。初めて導入した自治体は東京都で、その10年後の2017年に大阪府、現在は全国へ導入の動きが広がっています。現在、導入している地方自治体は以下です。
東京都 :2002年導入
大阪府 :2017年導入
福岡県 :福岡県2020年導入、福岡市2020年導入、北九州市2020年導入
京都府 :京都市2018年導入
石川県 :金沢市2019年導入
北海道 :倶知安町2019年導入
宿泊税は対象となるホテルや旅館に1人1泊すると発生します。金額は素泊まりでの料金を基準として課税します。また、自治体ごとに税率が異なり、「素泊まりの料金が●●円以上は課税、●●円未満の場合は非課税」などと分類しています。
※最新情報及び詳細はリンク先にて確認ください。
東京都 :東京都主税局 (1人1泊)
10,000円以上15,000円未満 → 宿泊税100円
15,000円以上 → 宿泊税200円
大阪府 :大阪府ホームページ (1人1泊)
7,000円以上15,000円未満 → 宿泊税100円
15,000円以上20,000円未満 → 宿泊税200円
20,000円以上 → 宿泊税300円
福岡県 :福岡県ホームページ (1人1泊)
福岡県(北九州市・福岡市以外)→ 宿泊税200円
北九州市 → 県税50円+市税150円 合計宿泊税200円
福岡市(20,000円以上)→ 県税50円+市税450円 合計宿泊税500円
京都市 :京都市ホームページ (1人1泊)
20,000円未満 → 宿泊税200円
20,000円以上50,000円未満 → 宿泊税500円
50,000円以上 → 宿泊税1,000円
金沢市 :金沢市ホームページ (1人1泊)
20,000円未満 → 宿泊税200円
20,000円以上 → 宿泊税500円
倶知安町:倶知安町ホームページ (1人1泊)
1人1泊、1棟1泊、1部屋1泊 の宿泊料金の2%
※各宿泊施設の宿泊料金の算定方法によって選択
宿泊税を一番最初に始めた東京都では、インバウンドに対しての観光事業者の支援や人材育成、多種多様の文化・習慣に対応した設備環境の向上、観光地のライトアップの導入などに使われています。また、日本の文化を感じる京都では、文化振興、公共交通機関の混雑対策などより観光に特化した分野で用いられています。そして、福岡県では、バリアフリーの整備、災害対応強化などにも使われています。このように、宿泊税は観光における様々な分野で活用されています。
宿泊税は、出張者が宿泊先で必ず支払い、ホテル予約時の代金には含まれません。宿泊先で宿泊税を支払ったら、必ず領収書をもらい社内で精算しましょう。
なお、宿泊税は、消費税の課税対象外(不課税取引)となります。そのため、会計時の仕訳においては宿泊費は旅費交通費(課税仕入れ)、宿泊税は租税公課(不課税仕入れ)として処理します。
宿泊税は、消費税の課税対象外(不課税取引)です。そのため、原則、勘定科目は租税公課として仕訳しますが、宿泊施設の請求書や領収書に宿泊税の記載がある場合とそうでない場合によって異なります。
宿泊施設の請求書や領収書に宿泊税の記載がある場合の勘定科目は、租税公課になります。
例:宿泊費(ホテル代)11,000円(うち消費税 10% 1,000円)、宿泊税200円の合計11,200円をホテルに現金で支払った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
旅費交通費(課税仕入) | 11,000 | 現金 | 11,200 |
租税公課(不課税仕入) | 200 |
請求書や領収書に宿泊税の記載がない場合は、宿泊費を含め支払った全額を課税仕入れとして計上することが可能です。その場合の勘定科目は、旅費交通費になります。
宿泊施設の請求書や領収書に宿泊税の記載がある場合の勘定科目は、租税公課になります。
例:宿泊費(ホテル代)11,200円を支払った。領収書には宿泊税の記載はなかった。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
旅費交通費(課税仕入) | 11,200 | 現金 | 11,200 |
出張費の費目や課税・不課税について知りたい方はこちらをご覧ください。
出張費はどこまでが対象範囲?課税対象?出張費の基礎知識をおさらい
温泉施設を有するホテルでは、宿泊税のほかに入湯税の支払いが必要な場合があります。総務省が原則定めている入湯税は「150円」ですが、実際は市区町村によって異なり、それぞれの市区町村で独自に定めることもできます。
入湯税の勘定科目や消費税の取り扱いについては、原則、宿泊税と同じと考えてよいでしょう。
宿泊施設の請求書や領収書に入湯税の記載がある場合の勘定科目は、租税公課になります。
例:宿泊費(ホテル代)11,000円(うち消費税 10% 1,000円)、宿泊税200円、入湯税150円の合計11,350円をホテルに現金で支払った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
旅費交通費(課税仕入) | 11,000 | 現金 | 11,350 |
租税公課(不課税仕入) | 200 | ||
租税公課(不課税仕入) | 150 |
請求書や領収書に宿泊税の記載がない場合は、宿泊費を含め支払った全額を課税仕入れとして計上することが可能です。その場合の勘定科目は、旅費交通費になります。
宿泊施設の請求書や領収書に宿泊税の記載がある場合の勘定科目は、租税公課になります。
例:宿泊費(ホテル代)11,350円を支払った。領収書には宿泊税や入湯税の記載はなかった。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
旅費交通費(課税仕入) | 11,350 | 現金 | 11,350 |
上記のように、宿泊税や入湯税は、明らかになっている場合とそうでない場合で異なる勘定科目を用いて経費処理する必要があります。
宿泊税や入湯税は原則、現地での支払いとなります。オンライン予約サイトでホテルを予約し、事前払いをした場合も現地請求があるので気を付けましょう。同様に、海外では、リゾートフィーという名目で、各ホテルが独自に設けている追加費用が存在します。リゾートフィーはハワイやラスベガスなどでは一般的であり、現地払いが原則になるので事前に確認しましょう。
出張先に多い東京・福岡を始め、宿泊税は今後も導入する自治体が増えていく予定です。ホテルの予約をする際は、宿泊税の有無も併せて確認し宿泊先を選択しましょう。