経費削減は、全ての企業において求められるビジネス上の取組といえます。経費削減は、利益増加につながることから、売上増加と同様の効果が期待できます。一方で、過剰な経費削減は、従業員のモチベーション低下につながるといった課題があります。
本日は、経費削減について具体的な削減方策の紹介や進め方について解説します。
企業の経費とは、企業活動で発生する費用の総称であり、具体的には、例えば下記の費用が発生しています。
冒頭でお伝えしたように、経費は企業の利益に直結しており、経費削減は利益増加につながります。しかも、売上増加よりも即効性がある施策と言えます。また、経費削減に伴い業務効率化が図れた場合は、従業員のモチベーション向上につながるといった副次的な効果が期待できます。
さらに、従業員のコスト意識を高めることで、利益志向が高まり、筋肉質な経営を実践することが可能です。
ここでは経費削減の進め方を解説します。
経費削減の第一ステップは経費データの取得です。経費全体の内訳を確認できる環境を作りましょう。
取得すべきデータの粒度としては、福利厚生費という大きな単位ではなく、その内訳まで取得することで具体的な活動と費用を結びつけることができます。
経費全体の内訳を入念に見直して、各項目の必要性を整理しましょう。必要性を判断するうえでは、①現状発生している費用(一回あたりの費用×発生頻度)、②対応に必要な作業工数、③代替案の有無の3点で整理すると良いでしょう。一般的には、「代替案があることが前提で、①現状発生している費用が大きく、かつ、②対応に必要な作業工数が少ない」ものから優先的に削減方策を検討していきましょう。
各経費の精査により優先度が高い費用項目をピックアップしたら、経費削減効果を試算しましょう。経費削減効果にあたっては削減金額だけでなく、追加で発生する業務工数や機会損失なども整理しておきましょう。
経費削減効果を試算した後に、経費削減の対象となった費用項目については、具体的なアクションプランと目標設定を定めていきましょう。目標については、「三カ月後に20%削減する」など期間と金額を明確にしましょう。
担当者が頑張って試算した費用削減効果や目標、アクションも実行されなければ意味がありません。アクションを実行するためには、組織全体に費用削減の目的を伝えたうえで、目指すべきゴールやその為のアクションを伝えていきましょう。
実施すべき経費削減施策は、企業によって異なりますが、多くの企業に共通しうる取組もあります。ここでは汎用的な経費削減施策を紹介します。
オフィスの電気や水道などのインフラの契約プランを見直すことで、経費削減効果が見込めます。電気、水道に関するプラン変更や他社に切り替えることで毎月の出費を大幅に減らせる場合があります。また、インターネットや保険も見直しによる経費削減効果が見込めるので併せて確認しましょう。
企業では、従業員への給与振込や取引先への振込が頻繁に発生するため、年間の振込手数料は高額になります。
例えば、月に100回の振込があり、一回当たりの手数料が250円とした場合、年間で30万円(100回/月×12ヵ月×250円/回)となります。
仮に金融機関と交渉し、手数料を150円に下げることができれば、それだけで年間12万円の経費削減になります。
なお、ボリュームが少なく金融機関との交渉が難しい場合は、インターネットバンクを活用し、振込手数料を減らすと良いでしょう。
ITシステムを社内に導入することで、印刷・インク代を削減することができます。また、保管スペースやバインダー等も不要になるため、上記以外の経費も削減可能です。
ペーパーレスが期待できるシステムとしては、経費精算システム、稟議システム、電子契約システムなどがあります。
また、製造会社などでは販売管理システムを導入することで会計処理まで自動で完了するため、入力ミスや不正の防止にも役立ちます。
リモートワークや在宅ワークなどの新しい働き方を取り入れることにより、オフィス賃料、出勤の交通費などを経費が削減できます。また、先ほど述べたオフィスの電気代や水道代にも削減効果が及びます。
新しい働き方の推進は、採用にもポジティブに働くことが多いため、導入を検討する価値がある取組と言えるでしょう。
業務のアウトソーシングも経費削減の方策と言えます。専門的な業務の場合、社員がその仕事ができるようになるためには一定の教育コストや時間が発生します。それらの経費や労力を軽減するために、外部事業者への委託を検討してみましょう。
出張費用は、販管費の中で大きな割合を占めるため、削減効果の高い取組の一つと言えます。国内出張であれば平均5~10万円、海外出張ではアジアで30万円、欧米であれば100万円程度の費用が発生します。出張費用が毎月50万円程度発生している企業であれば、10%の削減によって、年間60万円のコスト削減が期待できます。
具体的な出張費用削減施策は、以下の通りです。
国内出張では宿泊費用に関して定額支給を採用している企業が多いでしょう。しかし、定額支給の場合、支給額と宿泊相場に乖離があると、企業が本来払わなくてよい費用を支給していることになってしまいます。そのため、実費精算とすることで実態に即した宿泊費用を計上することが可能です。
出張精算の対応をしていて、同じ出張なのに従業員によって請求額が大きく異なるケースなどはないでしょうか。出張手配方法を一元化していない場合、出張者の裁量が大きいため、本来もっと安く手配できるのに高額な予約をしてしまうケースなどがあります。また、出張者が自身のマイレージをためるために高額な予約を選択するなど、過剰な予約を意図的に選択してしまう場合もあります。
出張管理システムを導入すると手配情報が一元化されるだけでなく、手配金額が均質化する傾向にあるため、高額な出張費用を抑制することが可能です。
出張費用削減のコツを紹介。安いチケットを探すよりも効果的な方法は?
経費削減の取組は、会社の利益増加に多大な効果を与えるアクションですが、取組にあたっては注意点もあります。ここでは経費削減施策を実行する上での課題点を解説します。
経費削減しようと福利厚生を大幅にカットした場合などは、従業員から不満が発生する可能性があります。離職率の増加につながる場合もあるため、経費削減の実行において最も注意したい点と言えます。経営者と従業員の視点は大きく異なるため、今あるものをなくす場合は従業員と対話をしたうえで決定していきましょう。
経費削減の成果を求められ、短期的に削減できる費用をどんどん削った結果、長期的な経営に悪影響を与えるケースがあります。例えば、広告費用を極端に下げた結果、企業の認知度が大幅に低下し、数年先に売上が激減するパターンなどがその例です。
経費削減は手段であり、目的ではありません。経費削減の先に起こりうる事象をしっかりと考えたうえで施策を実行しましょう。
経費削減に関する目標と施策を社員に通達したが、実行する従業員がおらず、期待した効果が全く現れないといったケースがあります。
経費削減に取り組む場合は、プロジェクトチームを立ち上げるのが理想です。また、施策実施に当たっては、経営層から全社員に対し、経費削減の重要性と目的を伝えましょう。
日頃の経営では、売上増加に意識がいきがちですが、支出の削減も立派な経営施策と言えます。利益が創出できれば、従業員の賃金アップも期待でき、好循環を創出することができます。従業員のモチベーションを落とすことなく、効率的な経営を実践することで、利益構造の優れた会社を目指していきましょう。