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インボイス制度の導入以降、出張精算の現場では「大量の領収書(インボイス)の回収・確認業務」が大きな負担となっています。
そんな経理・総務担当者の救世主とも言えるのが「出張旅費特例」です。この特例を正しく活用すれば、インボイスがなくても帳簿の保存だけで仕入税額控除を受けることができます。
しかし、実務の現場では以下のような疑問や不安の声をよく耳にします。
そこで本記事では、出張旅費特例の基本要件はもちろん、公共交通機関特例との違いがひと目でわかる比較表、出張旅費規程がない企業が抱えるリスク、さらには「よくある帳簿記載ミス5選」までを徹底的に解説します。
さらに、記事の後半では「特例の管理工数そのものを完全にゼロにする」という、BTM(出張管理システム)を活用した最先端の効率化ノウハウもご紹介。
もくじ
出張旅費特例とは、従業員に支給する出張旅費等について、インボイス(適格請求書)の保存がなくても、一定の要件を満たした帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる特例制度です。
通常、消費税の仕入税額控除を受けるためにはインボイスの保存が必須ですが、出張に伴う大量の領収書を回収・管理することは、出張者と経理担当者の双方にとって大きな負担となります。この実務上の負担を軽減し、経理処理業務を効率化するために本特例が設けられています。
本特例の対象となるのは、「社員の出張や転勤、通勤のために通常必要であると認められるもの」です。具体的には以下の費用が該当します。
出張旅費特例の大きな特徴は、公共交通機関特例(3万円未満の公共交通機関が対象)などとは異なり、支給する金額に一律の「〇万円まで」といった上限が設けられていない点です。
航空券代や長期間の宿泊費など、支払う金額が高額であっても、その出張において「通常必要と認められる範囲内」の金額であり、自社の「出張旅費規程」等に基づいて適正に支給されているものであれば、金額の多寡にかかわらず特例の対象(インボイス不要)となります。
仕入税額控除とは、課税事業者が納税すべき消費税を計算する際、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を差し引いて計算することにより、消費税の二重課税を解消することができる制度です。結果として、企業にとっては節税効果を得ることができます。仕入税額控除の運用がインボイス制度導入によって下記の通り変更しました。
インボイス制度が導入される2023年9月30日までは、3万円未満の取引は領収書がなくても特例扱いとして、消費税の仕入税額控除が認められていました。例えば、オフィスで消費する文具類、消耗品などの購入費などは、3万円未満であればこの特例に該当します。
しかし、2023年10月1日より開始したインボイス制度ではこの特例がなくなり、3万円未満でも領収書の受領及び保存が必要となります。数百円のコピー用紙を購入したとしても、領収書の受領が必須になります。
インボイス制度では原則として領収書(適格請求書)の保存が必須ですが、取引の性質や実務上の負担を考慮し、「帳簿の保存のみ」で仕入税額控除が認められる9つの例外取引が国税庁によって定められています。
国税庁が指定する、帳簿のみで仕入税額控除が可能となる取引は以下の通りです。
(1)3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
(2)適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券などが使用の際に回収される取引(ただし、1に該当する取引を除く)
(3)古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入
(4)質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の取得
(5)宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入
(6)適格請求書発行事業者でない者からの再生資源および再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入
(7)適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機および自動サービス機からの商品の購入
(8)適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)
(9)従業員などに支給する通常必要と認められる出張旅費など(出張旅費、宿泊費、日当および通勤手当)
出典:国税庁(帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合)
出典:国税庁(出張旅費、宿泊費、日当等に係る仕入税額控除の適用要件)
なぜ「従業員への出張費」が例外として認められるのか?
上記の通り、出張旅費は「9番目」の例外取引として明記されています。 なぜ出張費がインボイス免除の対象になるかというと、「出張者が各地で受け取る大量の領収書を、企業がすべて適格請求書(インボイス)として回収・確認・管理することは、実務上きわめて困難である」と国税庁に認められているためです。
この9つの例外取引のうち、一般的な企業の出張実務に直接関係してくるのは、次の2つの特例です。
この2つの特例は、同じ出張費用であっても「誰が決済したか」「支払う上限金額があるか」によって適用ルールが大きく異なります。実務での誤りが多いポイントでもあるため、以下でそれぞれの違いと使い分けについて詳しく解説します。
3万円未満の公共交通機関による旅客の運送は、「公共交通機関特例」と呼ばれ、インボイスの交付義務が免除されているため、帳簿に通常の記載事項に加え、「公共交通機関特例」などと記載すれば帳簿のみの保存での仕入税額控除が認められます。
出張旅費規程に従って出張旅費などを従業員に支給する場合は、会社と従業員の間で取引があったと捉え、会社は従業員から課税仕入を行ったとみなされます。そのため、会社から従業員への支給額が仕入税額控除の対象になります。
この場合、帳簿に通常の記載事項に加え、「出張旅費等特例」などと記載すれば帳簿のみの保存での仕入税額控除が認められます。
なお、仕入税額控除を受けることができる金額は「その旅行に通常必要であると認められる部分」に限られています。所得税の非課税の範囲は、所得税基本通達9-3に記載されている非課税旅費の範囲の例に基づき判定されます。出張手当などの金額は常識的な範囲内に設定するようにお気を付けください。
非課税とされる金品は、旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、旅行者の職務内容・地位などからみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。
(1) その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
(2) その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか
所得税基本通達9-3
出典:国税庁(出張旅費、宿泊費、日当等)
同じ「インボイス不要(帳簿保存のみ)」の特例であっても、「公共交通機関特例」と「出張旅費特例」では、対象となる費目や金額の上限、さらには「誰が決済したか」の条件が大きく異なります。
実務で「この取引はどちらの特例が使えるか」を判断できるよう、違いを比較表にまとめました。
| 公共交通機関特例 | 出張旅費特例 | |
|---|---|---|
| タクシー・飛行機 | × 利用できない | 〇 利用できる |
| 主な対象費目 | 鉄道(新幹線・在来線)、バス、船舶 | 電車、バス、タクシー、飛行機、宿泊費、日当など |
| 金額の制限 | 3万円未満の取引に限る | 一律の金額制限なし(3万円以上も対象) |
| 支払者(決済方法) | 会社・従業員のどちらでも可(法人カード等もOK) | 従業員の立替払い(精算)に限る ※会社直接支払いは対象外 |
実務担当者が特に注意すべき3つの相違点
公共交通機関特例の対象は「一般の旅客運送(電車やバスなど)」に限定されているため、タクシーや飛行機は対象外となります。そのため、3万円未満であってもタクシー代や飛行機代をインボイスなしで控除するためには、「出張旅費特例」の要件(従業員による立替精算であること)を満たす必要があります。
公共交通機関特例は「1回の取引が3万円未満」という厳格な上限がありますが、出張旅費特例には金額の上限がありません。出張旅費規程に基づいた適正な範囲内であれば、3万円以上の新幹線代や宿泊費であっても特例の対象になります。
出張旅費特例は、あくまで「会社が従業員に対して出張旅費を支給する(精算する)」ための特例です。そのため、会社名義のクレジットカードで直接決済した場合や、コーポレート決済(会社への一括請求)を利用した場合は出張旅費特例の対象外となり、原則通りインボイスの回収・保存が必要になります。
「法人カードで決済したタクシー代(インボイスなし)」は、公共交通機関特例(タクシーのため対象外)も出張旅費特例(立替ではないため対象外)も使えません。この場合は仕入税額控除ができないため、必ずインボイス(領収書)を回収する必要があります。
出張旅費特例は、インボイスの回収・管理コストを大幅に削減できる非常に強力な制度です。しかし、この特例を適用するためには、支給する費用が「その出張に通常必要と認められる範囲内」であるという大前提があります。
社内に「出張旅費規程」が整備されていない企業や、規程に基づかない運用をしている企業が、内部統制・ガバナンス観点で見落としがちな「特例が無効(適用不可)になる3つのケース」を解説します。
出張旅費特例における「通常必要と認められる範囲」を客観的に証明する最も確実な証拠が「出張旅費規程」です。 規程が存在しない場合、支給した日当や宿泊費が妥当な金額であるかどうかの基準が曖昧になります。税務調査において「役員や特定の従業員に対する個人的な性質の支給ではないか」と指摘された際、客観的な反証ができず、出張旅費特例の適用(インボイス不要での仕入税額控除)そのものが否認されるリスクがあります。
出張旅費規程によらない旅費交通費を従業員が立て替えている場合、それは特例の対象外(通常の取引)とみなされる可能性が高まります。 通常の取引として仕入税額控除を適用するためには、原則通り「会社宛ての適格請求書(インボイス)」の受領および保存が必要です。出張先で新幹線、タクシー、ホテルなどすべての領収書の宛名を「会社名」で統一するよう従業員に義務付けるのは、実務上きわめて困難であり、回収漏れによるコスト増(控除不可)に直結します。
出張旅費規程がなく特例が使えない場合で、さらにホテルや店舗から受け取った領収書の宛名が会社名ではなく「従業員の個人名」になっているケースは特に注意が必要です。
この状態の領収書は、会社としての適格請求書の記載事項を満たしていないため、そのままでは仕入税額控除ができません。これを解消するには、従業員自らが作成した「立替金精算書」をインボイス付きの領収書とセットで保存するという厳格な事務処理が必要になります。このガバナンス体制が社内で形骸化していると、監査や税務調査のタイミングで一斉に否認されるリスクを抱えることになります。
これまでの内容を踏まえ、出張費における旅費交通費の取り扱いについて、パターン化して整理します。
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公共交通機関特例の特例対象です。帳簿のみ保存による仕入税額控除が可能となる取引となるため、帳簿に通常の記載事項に加え、「公共交通機関特例」などと記載すれば帳簿のみの保存での仕入税額控除が認められます。
出張旅費特例の特例対象です。帳簿のみ保存による仕入税額控除が可能となる取引となるため、帳簿に通常の記載事項に加え、「出張旅費等特例」などと記載すれば帳簿のみの保存での仕入税額控除が認められます。
どちらの特例も対象外です。宛名が会社となっている適格請求書が必要です。なお、会社宛の請求書が用意できない場合は、適格請求書に加え、出張者による立替金精算書が必要になります。
帳簿への記載・保存のみで仕入税額控除の適用を受けられる特例について、帳簿に記載が必要な事項は以下の通りです。
| 1. 相手方の氏名または名称 2. 取引年月日 3. 取引内容(軽減税率対象の場合、その旨) 4. 税率の異なるごとに区分した支払対価の額 5. 摘要欄に特例の適用がある旨の記載 (「出張旅費等特例」と記載) |
出張旅費特例の運用で見落としがちな帳簿記載ミス5選と対策
インボイス制度の導入から数年が経過し、税務調査でも出張旅費特例の運用実態が厳しくチェックされるようになってきました。「インボイスがないから一律で特例を適用する」といった大まかな運用をしていると、思わぬ仕訳ミスや税務リスクに繋がります。
実務担当者が特に見落としがちな5つの帳簿記載ミスと、その具体的な対策を解説します。
出張旅費特例を適用して仕入税額控除を受けるためには、帳簿の摘要欄等に法的に定められた文言を明記する必要があります。単に「出張費」「新幹線代」とだけ記載し、特例の対象であることを書き忘れるケースが多発しています。
帳簿には必ず「出張旅費等特例」または「従業員等に支給する出張旅費等」と記載してください。「出張特例」などの自己流の省略形は避け、経費精算システムの自動入力テンプレートに上記の正確な文言をマスター登録しておきましょう。
前述の通り、タクシーや飛行機は公共交通機関特例(3万円未満)の対象外です。これらを従業員が立替払いした場合は「出張旅費特例」が適用できますが、帳簿の理由欄に誤って「公共交通機関特例」と記載してしまうミスが見られます。
手動入力に頼ると高確率で混同します。経費精算システム側で「タクシー代(立替)」の費目を選んだ場合は自動的に「出張旅費等特例」、「在来線(3万円未満)」を選んだ場合は「公共交通機関特例」と摘要欄に印字されるよう、システム設定を紐づけてください。
「飛行機代や新幹線代だから」という理由だけで、会社名義のコーポレートカードやBTM(出張手配システム)で直接決済した費用に対して「出張旅費等特例」と帳簿に記載してしまうミスです。出張旅費特例は「従業員の立替払い(精算)」が絶対条件であるため、会社直接決済の場合は特例の対象外(通常の取引)となります。
会社直接決済のものは特例ではなく、原則通りインボイス(適格請求書)の保存が必要です。ただし、BORDERなどのBTM経由で手配・一括決済した分については、システム側でインボイスデータが自動保存されるため、帳簿への特例記載は不要(通常の仕訳でOK)となります。立替分(特例適用)と会社決済分(自動保存)の運用ルールを明確に区別しましょう。
社内の出張旅費規程で「宿泊費の上限は1万円」と定められているにもかかわらず、出張者が自己都合で2万円のホテルに泊まり、その全額を会社が精算して「出張旅費等特例」を適用してしまうケースです。規程を超えた部分の金額は「通常必要と認められる範囲」から外れるとみなされ、特例が否認されるリスクがあります。
規程を超えた支給分については、原則として「会社宛てのインボイス」の保存がない限り仕入税額控除ができません。精算システム上で規程上限オーバーのアラートが出る仕組みを構築し、経理で個別にインボイスの有無を確認するフローを徹底してください。
出張日当(手当)は、所得税法上は「非課税所得(給与明細に載せても住民税や所得税がかからない)」として扱われます。この「非課税」というイメージに引っ張られて、消費税の仕訳でも「非課税仕入」や「不課税仕入」として処理してしまう経理の初歩的ミスが絶えません。
出張旅費規程に基づいた適正な国内出張の日当は、消費税の世界では「課税仕入」の対象であり、出張旅費特例を使ってインボイスなしで仕入税額控除が受けられます(※海外出張の日当は消費税の対象外となるため不課税です)。「所得税は非課税、消費税は課税」という二重の性質を正しく理解し、システムの税区分を設定しましょう。
ここまで、出張旅費特例を安全に適用するための帳簿の書き方や注意点を解説してきました。しかし、経理担当者の本音としては、「そもそも従業員ごとに異なる立替経費をチェックし、摘要欄に『出張旅費等特例』と正しく記載されているか目視で確認する行為自体が大きな負担である」ということではないでしょうか。
この「特例の管理工数」という実務のジレンマを根本から解消するのが、出張管理システム(BTM)の導入です。BTMを活用すると、そもそも出張旅費特例の適用を検討する必要すらなくなります。その理由をベンダーの視点から解説します。
出張旅費特例は、あくまで「インボイスの回収が難しい立替払い」を救済するための制度です。 一方、BORDERをはじめとする出張管理システム(BTM)を経由して新幹線や飛行機、ホテルを手配した場合、すべての決済は従業員の立替ではなく「会社への一括請求(直接決済)」になります。
この場合、システム側から適格請求書(インボイス)の要件を満たした請求データや一括領収書が毎月自動的に発行されます。つまり、特例に頼ることなく、原則通りにインボイスを100%確保して仕入税額控除を受けることができるため、特例の要件を満たしているかを心配する必要がそもそもなくなります。
従業員の立替払いに対して出張旅費特例を適用する場合、前述したような「摘要欄の文言ミス」や「出張旅費規程の上限チェック」など、税務調査を意識したガバナンス管理が欠かせません。規程がない企業であれば、大量の「立替金精算書」の作成と保管に追われることになります。
BTMを導入して決済を会社一括に集約すれば、これらの事務作業はすべて不要です。
これらすべての実務工数が完全にゼロになり、経理部門は月1回届く一括請求データをそのまま通常の仕訳として処理するだけで業務が完了します。
インボイス制度が定着した現在、企業の経理・総務部門に求められているのは、ルールを厳格に守ることだけでなく、「いかにガバナンスを保ちながら実務をシンプルにするか」です。
クラウド出張手配システム「BORDER」なら、手配と決済を会社一括請求に一本化し、適格請求書データの自動一元管理を実現します。出張旅費特例の複雑な運用や、現地払いの宿泊税の精算に悩まされる日々から解放され、社内のノンコア業務を圧倒的に削減できます。
自社の出張規模に合わせた具体的な導入シミュレーションや、経費精算システムとの連携方法についてのご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
かし、手続きが煩雑になっているのは事実なので、旅行代理店などと契約し、会社への一括請求とするのが最も運用負荷が少ないと考えられます。御社における出張に伴う経理作業の参考になれば幸いです。
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