多くの企業では、出張者に対して日当を支給しています。
その理由としては、出張手当は、課税の対象外となるため企業の節税や従業員の手取り額の増加につながることと、経費精算の際の手間が大幅に軽減することが挙げられます。
ただし、出張手当のメリットである節税効果を発揮するためには、出張規程において、出張旅費規程を整備することが求められます。その整備の際に課題となるのが、出張手当の金額設定です。
出張手当が少なすぎると従業員のモチベーション低下を引き起こします。一方で日当が高すぎると、「通常必要であると認められる金額」とは認められず、課税対象となってしまいます。
企業にとって妥当な出張手当はいくらなのでしょうか。ここからは日当の設定方法についてお伝えします。
一般的には、役職によって出張手当を区分している企業が多いです。その背景としては、出張中に発生する食費や通信費などの諸雑費の手当にあたる日当は、役職によって用途や金額が若干異なるためです。例えば、役員であれば出張先の取引先の重役と会食ということもあるでしょう。そうした場合に、必要経費が高くなる傾向にあるため、日当も高く設定されているケースが多いです。
なお、産労総合研究所が実施した調査「2019年度 国内・海外出張旅費に関する調査」によると、一般社員の日当を100とした場合、部長クラスは127.3、取締役クラスは172.5、社長が212.9という結果が出ています(日帰り出張の場合)。
国内出張においては日帰り出張となるケースも少なくありません。日帰り出張の場合は、宿泊出張と比べて諸雑費が発生する頻度が少なくなるため、出張手当が少なくなる傾向にあります。
海外出張における雑費の大小は、出張先の物価によるところが大きいです。欧米では、簡単な昼食でも2,000円を超えるケースもあります。一方で、地域によっては日本の物価の半分程度のエリアもあり、そうした物価差を考慮して、日当が設定されることが一般的です。
先ほど述べた出張手当を設定する際に考慮すべきことに基づいて、出張手当の相場を確認していきましょう。なお、出張における日当の相場については、産労総合研究所が実施した調査「2019年度 国内・海外出張旅費に関する調査」から引用しています。
引用:「2019年度 国内・海外出張旅費に関する調査」(産労総合研究所)
日帰り出張の日当は、基本的には、打ち合わせ前後の時間調整のための飲食費用や通信費が対象となります。日当の相場は、企業によってばらつきがありますが、社長で4000円台、取締役で3,000円台、部長クラスで2,500円台、一般社員で2,000円程度となります。
国内における宿泊出張の日当は、日帰り出張と同様、打ち合わせ前後の時間調整のための飲食費用や通信費が対象となります。ただし、滞在時間が長くなる分、食費等が増える傾向にあります。そのため、宿泊出張における日当相場は、日帰り出張における日当相場に比べて、200~300円程度の金額増加がみられます。
海外出張における日当も、国内出張と同様、飲食やその他現地で必要になる通信費等が対象になります。出張手当の相場は、出張地域の物価によって異なり、欧米エリア>中東エリア>アジアエリアという順に手当の金額が高い傾向にあります。
また、出張手当は役職で異なり、社長クラスで6,500~7,000円程度、部長クラスで5,500~6,000円程度、課長クラスで5,200~5,600円程度、係長クラスで4,800~5,300円程度、一般社員で4,700~5,200円程度になります。
本記事の最後に出張手当の設定の流れについて解説します。
はじめに、出張時に日当を支給するか否かの判断をします。企業によっては、海外出張のみ日当を支給する、国内出張でも日帰りは対象外とするというケースもあります。
産労総合研究所の「2019年度 国内・海外出張旅費に関する調査」によると、国内出張における支給の割合は以下の通りです。
国内日帰り出張:84.2%
国内宿泊出張:91.2%
日当は節税効果や業務効率化などのメリットが多いですが、経費の不透明さを生み出す可能性もあります。それゆえ、まずはどの出張に対して日当を支給するかを明確にしましょう。
出張手当支給の有無を決めた後は、手当の額を決めます。先ほどお伝えしたように、役職や宿泊エリアによって、どのように金額を変えるのかは、統計情報を参考にしつつ、決定していきます。
なお、事業内容により、雑費の構成が変わるケースもあるため、同業他社に確認してみるのもよいでしょう。
出張時の日当相場の概算が決まったら、出張者にヒアリングを行い、金額の妥当性を判断しましょう。出張時に、どういった費用が発生しているのかを確認し、支出の頻度と金額を調査します。
出張時の日当相場とヒアリング結果をもとに、日当額及び日当の対象範囲を定め、その結果を出張旅費規程に反映させます。
日当は出張旅費規程に記載することで効果を発揮するので、必ず出張旅費規程に盛り込むようにしましょう。
出張旅費規程の整備が完了したら、従業員に通知します。また、規程の内容に加え、経理のオペレーションについても補足説明すると、出張者や経理部門の対応がスムーズになります。
設定した日当(出張手当)は一般的には、「旅費交通費」の勘定科目を使用します。また、仕訳時の課税処理は、「非課税」扱いになります。なお、出張者からの経費報告においては、対象外のものが出張手当に含まれていないか、旅費交通費と重複処理していないかを確認しましょう。
出張費用の勘定科目についてもっと知りたい方はこちらをご覧ください。
いかがでしたか。日当は出張者のモチベーションに影響するため適正な設定が重要になります。とりわけ海外出張においては、現地の物価の影響を受けやすいため、定期的な見直しが求められます。
出張手当を最適化し、より効率的な出張のバックオフィスを整備していきましょう。
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