企業活動において、新規取引先の開拓や支店との連携など、出張が必要になるケースは多々あります。一方で、出張においては、移動費用や宿泊費用などが必要となり、それらの費用は相当の金額に達します。そのため、企業のキャッシュフローを改善するという意味でも、出張経費の節約は重要な取り組みといえるでしょう。
この記事では、出張に係る費用を削減するためのポイントや具体的な施策について解説します。
JTB-CWTの調査によると、2024年の出張経費予算は2023年と比較して、国内出張は105%増、海外出張は104%増という結果が出ています。国内海外ともに出張経費は増加傾向にありますが、その背景には航空券や宿泊費用の高騰があります。具体的な結果は以下の通りです。
エリア | 予算増加 | 予算継続 | 予算減少 |
国内 | 23% | 66% | 11% |
海外 | 26% | 61% | 13% |
出張経費が増加する以上、出張費の削減がより求められる環境になることが予想されます。
企業にとって出張経費を削減することの重要性は周知の事実だと思いますが、どこから手をつけてよいか迷っている方も多いと思います。また、社内に費用削減をするように指示しても、個々の出張者がそれを遵守するかは判断がつきにくいです。そこで、まずは経費削減にあたってのポイントを整理します。
出張費用の削減というと、ついつい比較サイトを通じて100円でも安い航空券やホテルを探してしまいがちですが、それよりも重要なのが早期に予約することです。
例えば、海外航空券の場合、ご出発の前の一週間前くらいになると、金額の増加は顕著であり、1日10%以上料金が高くなることもあります。それに対し、一か月前だと価格の上昇はほとんどありません。弊社が調べた結果だと、30日前に10万円だったチケットが出発直前には25万円になっているケースもありました。
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ホテルについても直前になると広い部屋しか空いていないケースが多く、価格は高くなりがちです。出張費を安くするためには、一日でも早く予約することが鉄則といえます。企業としては、従業員が出張が確定次第、直ぐに手配する仕組みを構築することが重要です。
出張において見落とされがちなのが、出張の過程で発生する出張申請や経費精算に要する業務コストです。それらの費用は当然、業務時間としてカウントされるため、人件費と考えるのが妥当でしょう。海外の調査では、出張に付随する業務工数は数時間にも及ぶと言われており、人件費で考えれば相当な金額になるでしょう。飛行機代を押さえるために複数のサイトや旅行会社に依頼し、金額を比較をするといった行動は、場合によっては間接経費を含めるとメリットを生まない場合もあるので注意が必要です。
管理部門が出張費の削減に向けた施策を考えた後は、出張者に施策を浸透させる必要があります。しかし、出張者が手動で手配をする場合は、その施策がどの程度遵守されているかを確認するのが大変です。一つ一つの予約を経理部門や管理部門がチェックすると、その作業は膨大な時間となるでしょう。一方でモニタリングをしないとせっかくの計画が無駄になってしまいます。
出張経費削減方策については、出張管理システム等を活用し、その浸透方法と削減効果をモニタリングしましょう。
出張経費削減に向けての取り組みは様々な施策が考えられますが、どの施策を取るべきかは、自社の出張実態によって異なります。例えば、新幹線出張がメインの企業にとって、国内フライトの削減施策はあまり効果を生み出しません。自社の出張傾向を確認したうえで、最適な施策を取り入れていきましょう。
航空券や航空券と宿泊施設をセットにしたパッケージ商品では、早割の制度があります。早割制度とは、予約日が早いほど安くなる制度です。一般的には、出発のおよそ21日前までに予約することで早割効果が期待できます。定例の会議など出張日が決まっているのであれば、積極的に活用するとよいでしょう。
早割制度は、価格面のメリットが大きい反面、キャンセル費用が高くなったり、返金がないケースもあります。そのため、早割制度の利用にあたっては、キャンセル規約をしっかりと確認するとともに、不確定要素の高い打ち合わせの場合は使用を控えるなど、工夫して活用しましょう。
先ほど紹介した航空券と宿泊施設のセット商品など、移動手段と宿泊施設をセットにしたパッケージ商品は早期予約でなくても、それぞれ個別に購入するよりも割安になる傾向にあります。
ただし、早割制度と同様に、キャンセル規約が厳しいため、使用にあたっては出張の実施の確度を考慮しましょう。
新幹線はJR各社と法人契約をすることで費用の削減につながります。例えば、JR東海が提供するエクスプレス予約を法人契約した場合、東京-新大阪間の利用はいつでも1,000円程度安くなります。また、費用の削減に加え、パソコンやスマートフォンで簡単に購入や変更できる点もメリットと言えるでしょう。
同様に航空券についても法人契約によって費用削減できる場合があります。特に海外航空券に関しては利用実績によって数%の割引が可能になるケースもあります。
ただし、法人契約を行う場合は一定の利用実績が用いられるため、自社の出張頻度を基に検討していきましょう。
飛行機での移動が多い会社は、格安航空会社(LCC)を活用してコスト削減することも可能です。LCCは運賃が安いのでタイミングがあえば、移動に要する費用を大幅に削減できる可能性があります。ただし、変更やキャンセルできないといった制限や空港の主要エリアから少し離れた場所で離発着するなどの課題があるので従業員と対話しながら利用を検討するとよいでしょう。
旅行会社はどこも同じと思われがちですが、会社によってサポート体制や手数料が大きく異なります。出張件数が多い場合は、手数料の影響も大きいため、旅行会社の見直しをするとよいでしょう。なお、Webでのセルフ予約を提供している旅行会社や法人向け旅行サービスは、一般的な旅行会社よりも手数料が安くなる傾向にあるので、出張費用を削減したい企業におすすめです。
続いては、出張専用のシステムを活用することによる出張経費の削減方策です。BTM(ビジネストラベルマネジメントシステム)を活用すると、経済合理性に優れた移動手段や宿泊施設が提案されます。
一方、出張者自身が手配する場合は、宿泊規程ギリギリの宿泊施設を選んだり、自分がマイルをためている航空会社を利用するために高額なフライトを選択する場合もあり、コスト高になりがちです。
フライト時間が長かったり、過ごしにくい施設など、出張者の身体的な負担を高めてしまっては元も子もありませんが、ビジネストラベルマネジメントシステム(BTM)は、あくまでも経済合理的なプランを提示するためのツールであり、出張者の身体的負荷とコストのバランスを適正化するうえで効果的な手法といえます。
続いては、出張手当の活用です。出張においては、取引先との会食や現地での諸費用が発生することがよくあります。それらの費用は、出張者に実費として経費処理させるのではなく、出張手当として処理することで、損金算入することができるため、法人税や消費税などの節税につながります。出張頻度の多い企業では、出張手当による節税は非常に効果的なため、日当を導入しましょう。
ただし、出張手当は、出張旅費規程として整備しないと認められないため、気を付けましょう。
参考:No.6459 出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い(国税庁)
コロナ以降、WEB会議が浸透しました。Web会議ツールも様々あり、画面越しにコミュニケーションをとることは容易になりました。WEB会議を活用すれば、出張費用や移動に要する時間をゼロに抑えることができます。ただし、サービスの導入時や重要な打ち合わせなど、業務の内容によっては直接会った方が良い場合もあるので、状況に応じてWEB会議と出張を使い分けるとよいでしょう。
曜日によって交通費や宿泊費は変わり、移動手段は土曜日・日曜日、宿泊施設は金曜日・土曜日が高くなります。出張経費を削減するためには、平日の火曜日から木曜日を中心に出張することをおすすめします。
近隣の都市へ出張する場合は、複数の出張をまとめて一出張として訪問することで、移動費用の削減が期待できます。
この記事では、出張に係る費用を削減するためのポイントや具体的な施策について解説しました。出張費用の削減と一口に言っても、ただ安いものを選択するのではなく、出張者の負担を意識しながら仕組みから変えていくのが大事です。また、出張経費等の直接経費に加え、出張に伴う申請や精算に伴う従業員の業務負荷など、間接費用も見逃すことができません。
経費削減プロセスを詳解。効果的な出張経費削減方策も紹介します。
少しの工夫で出張経費は削減できます。出張者に身体的負荷をかけずに、出張費用を削減することも可能なので、積極的に経費削減に取り組んでいきましょう。