法人出張による大きな課題の一つが出張者による費用の立替です。出張では航空券や新幹線、ホテルなど様々な費用が発生しますが、従業員が立て替えているケースも多々あります。出張者が費用を立て替えている場合、出張者に金銭的負担が発生すると同時に、出張者・管理側の双方に負荷のある出張精算業務が発生します。
本日は、出張費用の立替について再度整理するとともに、出張精算業務をなくすための方法について解説します。
立替経費とは、会社が業務をする上で必要な経費について、従業員が一時的に負担して支払うことを指します。例えば、顧客に送付する封筒を従業員が購入した場合や会食の際に会食費用を支払った場合が該当します。
こうした費用は本来であれば、会社が負担すべき経費なので、発生した費用について精算するために社内の手続きが必要です。
立替経費としては、旅費交通費、通信費、接待交際費や消耗品費などがありますが、中でも件数・金額ともに、多くの割合を占めるのが旅費交通費です。そして旅費交通費が発生する代表的な業務が出張です。
つまり、出張による立替は、立替経費の代表的な例といえるでしょう。
出張に伴う立替経費は、従業員が立て替えた経費を精算して支払済みの額が従業員に戻ってくる「実費精算」となるため、所得税の課税対象ではありません。実費精算される立替経費は会社が取引先に支払う他の経費と同様に、会社の経費として処理されます。
参考:実費精算の出張旅費に係る仕入税額控除の適用要件(国税庁)
出張で従行委が立て替えた費用はどのような手順で精算するのでしょうか。立替経費精算の流れは、一般的に次の通りです。
従業員が出張に必要となる新幹線や航空券、宿泊施設を自ら予約し、料金を支払います。
新幹線や航空券、宿泊施設の予約サイトにて領収書をダウンロードや印刷により取得します。
会社が指定する経費精算書を作成します。その際、2で取得した領収書を添付します。それらの書類を管理者に提出し、承認を得ます。
経理部門が管理者承認済みの経費精算書を確認し、問題がなければ経理処理します。なお、出張旅費規程に定めた内容を逸脱した場合や添付書類に不備がある場合は、内容確認のために申請者に質問するか、差し戻します。
社内ルールに沿って毎月の指定日や給料日に合わせて、経理や財務から精算金額が支払われます。なお、経理部門は、支払に合わせて経費精算を完了するための経理処理を行います。
出張に関する社内申請にご興味のある方はこちらをご覧ください。
続いては、出張経費の精算プロセスに伴う会計処理(仕訳)の流れです。
会計処理は発生しない(仕訳なし)
会社の経費が生じるタイミングは、本来会社が負担すべき経費を従業員が代わりに立て替えたこの時点です。しかし、経理は経費精算書や領収書が手元にくるまで従業員の立替時点を把握できませんので、通常、この時点で仕訳は行われません。
貸方:旅費交通費/借方:未払金
精算する経費の内容に合わせた費用科目(勘定科目)と、立替払いをした従業員に対する未払金を計上します。ここでは費用科目を旅費交通費としましたが、経費の目的に合わせて費用科目を変える必要があります。
貸方:未払金/借方:現金預金
従業員に対する未払金を取り崩して現金預金で支払った仕訳を計上します。仕訳の計上日は社内ルールに沿った毎月の指定日や給料日とすることが多いですが、同月内の処理として、月末の日付や月末に経理処理する会社もあります。
多くの企業では出張時に従業員に立替が発生していると思いますが、経費精算ではどういった課題があるのでしょうか。
出張では新幹線や飛行機を利用するため、相当の金額を立て替えることになります。例えば、東京から大阪への出張であれば新幹線の往復とホテル代で3~4万円は立替が発生するでしょう。また、海外出張の場合は、20~30万円立替が発生することもあります。
それらの費用を従業員が一時的に立て替えるのはかなりの金銭的負担になります。
出張費立替に伴う精算作業は出張者と経理部門の双方にとって負担のかかる業務といえます。
出張者にとっては、申請書類の作成に加え、領収書の収集など業務が発生します。海外出張の場合は、為替レートも考慮する必要があり、負荷は更に増します。
経理部門にとっても、申請者の書類に不備がないかや、出張旅費規程を満たしているかなどのチェックに工数を要します。さらに、出張者の中にはなかなか書類を提出しない者もいる、そういった方々への催促や書類保管のための業務なども発生します。
出張費の立替に伴う申請にあたっては様々なトラブルが発生しがちです。想定しうるトラブルとしては以下があります。
こうしたミスが発生すると、出張者、経理部門の業務負荷は更に増すことになります。
出張費用の立替を解消する方法
上記の通り、出張費用の立替には様々な課題があります。そのため、多くの企業では出張費用の立替をなくす取り組みをしています。ここでは出張費用の立替を解消する方法を紹介します。
出張者の金銭的負担を軽減するため、多くの企業が活用しているのが仮払金です。出張前に仮払金を支払い、出張後に差額を精算する形をとっています。この方法であれば出張者の金銭的負担を軽減することが可能です。
しかし、仮払金を活用しても立替経費精算の申請は必要なため、業務負荷の解決にはつながりません。
続いて活用されているのが、会社のクレジットカードの活用です。出張者が各種の予約を行う際に、会社のクレジットカードで決済を行うことによって、出張費の立替を回避します。最近はクレジットカードと連動している経費精算システムも多いため、経費精算プロセスも業務負荷を軽減することができます。
課題としては、管理側がコーポレートカードを管理する必要が発生する、従業員によるクレジットカードの紛失や不正リスクが存在するといった点を考慮する必要があります。
出張者の金銭的負担に加え、出張に伴う業務負荷軽減を可能にするのが出張管理システムの導入です。
出張管理システムでは出張手配をオンライン上に一本化できます。また、航空券や新幹線、宿泊施設などの各種費用の支払いを法人へ一本化できるため、出張者の金銭的負担を最少化することが可能です。
また、出張申請のワークフローや経費精算システムとの連動などにより、申請・手配・精算を合理化できるため、出張関連の業務負荷を大幅に軽減することが可能です。
出張管理システムについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
いかがでしたか。出張において、経費の発生を避けることは難しいでしょう。しかし、出張管理システムの活用等によって、出張費用の立替に伴う課題は削減が可能です。出張費用の立替が課題となっている企業は、出張管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。