日本と国交のある国には、大使館や領事館をはじめとした在外公館が基本的にはありますが、訪れた方は少ないのではないでしょうか。重要な役割を果たしているのだろうけど、実際にはどういったことに対応しているのか、大使館と領事館の違いは何なのかはあまり分からない方が多いと思います。本記事では、実際に海外でお世話になるかもしれない在外公館の役割について解説します。
在外公館とは、外国と外交を行う上で重要な拠点のことを言います。現在、世界各地に大使館、総領事館、政府代表部があり、それぞれに異なる機能を備えています。
一般的に民間人に関係する在外公館は大使館と総領事館です。
大使館は、基本的に各国の首都に置かれています。その国に対し、日本を代表する窓口となり、相手国政府との交渉や連絡、政治・経済その他の情報の収集・分析、日本を正しく理解してもらうための広報文化活動を行っています。また、邦人の生命・財産を保護することも重要な任務です。
なお、大使館における最上位の階級は、大使と呼ばれ、常駐の特命全権大使と臨時の特派大使からなります。大使のほかには、書記官や参事官といった外交官が様々な活動をしています。
総領事館は、世界の主要な都市に置かれています。その地方の在留邦人の保護、通商問題の処理、政治・経済その他の情報の収集・広報文化活動などの仕事を行っています。大使館とは異なり、相手国との外交問題や政治問題に関する権限は持っていません。
各国の首都にひとつしか設置できない大使館に対し、領事館は複数を設置することが可能です。
総領事館における最上位の階級は、総領事と呼ばれます。
政府代表部は、国際機関に対して日本政府を代表する機関で、国際連合、ウィーンにある国際機関、ジュネーブにある国際機関と軍縮会議、OECD(経済協力開発機構)、EU(欧州連合)に対する政府代表部等があります。
名誉(総)領事は、在外公館が設置されていない地域において、日本国民の利益の保護、外国との文化交流の促進等を図ることを目的として任命されます。職務内容は現地の事情等により異なりますが、邦人保護活動の支援や大使館や総領事館が現地で文化交流活動を行う際の支援があります。
名誉(総)領事には通常設置される地域の方が任命されます。身分上、公務員でないことから、職務内容は限定されており、旅券・査証の発給、国籍証明・在留証明等の公証を行うことはできません。
出張者に関係してくる在外公館の役割をまとめました。ただし、各大使館、領事館、名誉(総)領事によって対応の範囲は変わります。
項目 | 大使館 | 総領事館 | 名誉(総)領事 |
---|---|---|---|
設置場所 | 首都 | 主要都市 | 大使館・領事館がない地域 |
邦人の保護 | ○ | ○ | ○ |
パスポート・ビザの発行 | ○ | ○ | × |
滞在に関する証明書の発行 | ○ | ○ | × |
外交問題への対応 | ○ | × | × |
文化交流・発信 | ○ | ○ | ○ |
日本企業の支援 | ○ | ○ | ○ |
このように大使館と領事館の違いとしては、まず設置場所が大使館は首都であるのに対し、領事館は日本人が多く居住・滞在していたり、日本と経済的な結びつきが強い主要都市部であることがあげられます。
ほかには外交問題へ対応出来るかどうかという点があるでしょう。邦人のサポートや文化発信、企業支援といった活動は共通して行われています。
現地で事件や事故など、トラブルが起きた時はどうしたらいいか迷ってしまうと思います。たしかに在外公館では邦人の保護の役割を担っていますが、その程度は生命や人権に関わる内容に限られるでしょう。
トラブルに巻き込まれた際は、以下の対処を参考にしてみてください。
パスポートや滞在に関する許可証等を紛失した場合は、大使館や領事館で再発行してもらう必要があります。警察や消防署で紛失届や事故証明等を発行してもらい、管轄の大使館や領事館へ届け出ましょう。
盗難や事故にあった場合は警察や消防署へ行きましょう。なお、企業によっては、緊急時に出張者を支援する民間サービスに加入している場合があります。加入している企業は、出張者に連絡先を共有するはずなので、現地の言語でのコミュニケーションに不安がある場合は、積極的に活用しましょう。
加入している保険会社へ相談しましょう。状況に応じて、日本語のサポートや医療機関等の紹介を受けることが可能です。
海外旅行保険については以下をご覧ください。
日本の在外公館は以下からご覧ください。
大使館と領事館の役割について解説しました。日本国として外交問題に対応出来る機関が大使館であるのに対し、領事館はそうした権限を持っていない点が大きな違いです。こうした点から出張者にとっては、大使館と領事館の役割の差はあまり関係しないことが分かりました。
在外公館では、邦人に向けて危険情報や現地情報の発信を行っています。それらの情報をもとに自身の安全を守っていきたいですね。
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