本コラムでは、普段あまり意識できていないSDGsの観点から出張を考察します。SDGs×出張に関するコラムは3つに分かれており、前回は、SDGsに関する基本と、私達が身近にできる項目をご紹介しました。今回は「企業や個人のCO2削減への具体的な取り組み」にスポットをあててご紹介します。
出張×SDGs① SDGsとは?今さら聞けないSDGsの基本”>出張×SDGs① SDGsとは?今さら聞けないSDGsの基本
2020年は新型コロナウイルスが世界中に拡大し、外出制限など、これまでに想像もしなかった生活を送ることになりました。感染拡大の影響は、企業の働き方や出張を見直す機会になり、リモートワークやリモート会議が浸透していきました。しかし、2023年に入ると、感染拡大の終息とみなす国や規制緩和をする国が増加し、再び出張の需要が戻っています。アメリカに本社を置く、ビジネストラベルマネジメント会社のグローバル・ビジネス・トラベル・アソシエーション(GBTA)の世論調査によれば、既に出張の予約と支出は2019年の水準に戻りつつあると発表しています。
日本では2050年までに大幅なCO2削減を目標を実現するために、東京都をはじめ、企業に対してCO2削減の義務付けを実施しています。環境省が発表している2021年度の温室効果ガスの排出量に関する情報を以下のリンクよりご覧ください。
環境省|2021年度(令和3年度)の温室効果ガス排出・吸収量(確報値)について
大規模事業所とは前年度の燃料、熱、電気の使用量が、 原油換算で1500 ㎘以上の事業所を指します。これらの事業所に対して、燃料、熱、電気の使用に伴い排出されるCO2の削減を義務付けています。東京都は、2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減(2000年比)の実現に向け、地球温暖化の対策が特に優れた事業所には「トップレベル事業所」と認定し、東京都内全体で地球温暖対策の推進するよう工夫しています。
東京都観光局|大規模事業所への「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度 排出量取引制度」
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを指します。中小企業の温室効果ガス排出量は1.2億トン~2.5億トンと推計され、日本全体の1割~2割弱を占めているのが現状です。この問題に対して、中小企業の排出量の「見える化」の促進や、カーボンニュートラルに向けた設備投資等の促進をするために、支援機関(経済産業省側)は中小企業にプッシュ型の体制を取り様々な取り組みを実施しています。
SDGsの目標実現に向けて、出張CO2削減のアクションを起こしてみましょう。
1つの出張をリモート会議に変えることで、CO2削減に繋がります。毎月の出張数、出張先を振り返り、リモート会議で切り替えられる部分がないか「見える化」しましょう。
1度出張に行ったら、多く出張先を回れるように日程を調整しましょう。1ヶ月の出張で3回飛行機を利用していたところから、このように変更することで、飛行機や新幹線、宿泊施設でのCO2削減に繋がっていきます。
環境省と経済産業省では、「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」を作成し、温室効果ガスの排出量の算定方法や、具体的な削減方法などの情報を提供しています。こちらを活用して、出張を飛行機・電車・リモート会議どれを利用するかの基準を距離や期間ごとに作ることもできます。まずは以下のリンクから、知ってみることに挑戦しましょう。
環境省・経済産業省|グリーン・バリューチェーンプラットフォーム
今まで1人の社員が年に10回出張に行っていたところから、5回出張、5回リモート会議に変更することで、CO2の排出量も大幅に削減できます。出張が多い部署を確認し、年間の出張数に対して何割リモート会議に切り替えられるかを検討するのも良いでしょう。
CO2排出量削減の目標と具体的な工夫を知ると、少しずつ環境に対する意識の変化が訪れます。次回は実際にCO2排出量の削減に力を入れている企業の事例を紹介します。