海外出張の準備において、最初に頭に思い浮かぶものは海外航空券の手配という方も多いと思います。比較サイトを利用し、航空券を探すこともあると思いますが、そもそも格安航空券やコードシェア便(共同運航便)とはどういったものなのか、ご存知でしょうか?
本記事では、航空券の種類とそれぞれの特徴、業務渡航におけるメリットとデメリットについて解説します。
まずは海外航空券の種類を解説します。海外航空券には大きく分けて4種類の航空券が存在します。
正規運賃航空券とは、IATA(国際航空運送協会に加盟している全航空会社で利用が可能な航空券で、価格はIATAが決定しています。
1年間の有効期間内であれば、航空会社の変更・予約の変更・経路の変更・払い戻しなどが可能と、かなり自由度の高い航空券なのですが、その分料金はかなり高額となります。ファースト・ビジネス・プレミアムエコノミー・エコノミーと全ての座席クラスの取り扱いがあり、シーズンによって価格の変動がないという特徴もあります。
普通運賃航空券やノーマル航空券とも呼ばれます。
正規割引航空券はPEX航空券とも呼ばれ、変更や払い戻し、購入可能時期や予約期限等、購入・利用における制約事項を加えることによって、割引価格での購入を可能とした航空券です。出張手配において、よく利用されている海外航空券です。
PEX航空券の中でも「IATA PEX」「ZONE PEX」「APEX」と3種類の航空券があり、それぞれ以下のような特徴があります。
正規運賃と同様に、IATAが割引価格を決定します。そのため、IATA加盟航空会社であればどこでも利用が可能です。3つの航空券の中で最も割高となります。
航空会社が独自に設定する割引運賃が適用された航空券です。往復ともに同一の航空会社利用が原則ですが、安さと自由度のバランスがとれた航空券です。
ZONE PEXに購入可能時期や予約期限の制約を付加した航空券です。自由度がZONE PEXより低い分、安く購入することが可能です。
3つのタイプを紹介しましたが、旅行会社や航空会社、航空券の比較サイトのウェブページからこれらの違いは一見分からないことがほとんどでしょう。検索条件を絞ることで最適な料金が表示されているので、予約の際に意識する必要はありません。
巷で最もよく聞く格安航空券です。IT航空券とも呼ばれることもあります。一般消費者からは見分けが付きにくく、上述の正規割引航空券と混同して使われていることもあります。
航空会社は、パッケージツアー用に割引を適用した航空券を旅行代理店に大量に卸していますが、これを旅行会社側でバラ売りしたものが格安航空券です。まとめて卸すため、往復の便が固定され変更が出来ない、座席指定ができない、マイルの積算率が低いといった制約があるものが多いのも特徴です。
また、航空会社に価格決定権があるため、需給に応じて価格が変動しやすいのも大きな特徴です。閑散期は安く購入できる反面、繁忙期はPEX航空券よりも高くなることもあります。
なお、パック商品を前提とした運賃なので、バラ売りは禁止となっている場合もあります。業務出張等でのビジネス利用はルール違反となることもあるため、利用には注意が必要です。
最後は、LCC(Low Cost Carrier)航空券です。
LCCでは、使用する航空機種を絞る、1機体での座席数を増やす、機内サービスを最小限に抑える、販売を直販サイトに限定する等の徹底したコスト削減により、JALやANAに代表されるFSC(Full Service Carrier)に比べて安い料金を実現しています。
上記以外にも、荷物預かりの追加料金の発生や変更、キャンセルの制約も多いことが特徴です。最近では、カスタマーサポートや料金形態が充実してきており、追加料金を支払えばFSCと同等以上のサービスを受けられることもあります。ただし、FSCに比べ、ターミナルやチェックインカウンター、乗降口が空港の端にあることも多いため、利用する際は移動時間に余裕を持たせましょう。
4種類の航空券について解説しましたが、業務渡航での利用という観点では、どのタイプが適しているのでしょうか。
一般的に、出張手配における航空券の選定要件には「コスト」「変更の柔軟性」「問題発生時のサポート」が挙げられます。ここでは3つの軸で、各航空券の特徴を整理します。
正規運賃航空券 | 正規割引航空券 (PEX航空券) | 格安航空券 (IT航空券) | LCC航空券 | |
---|---|---|---|---|
コスト | × | ○ | ◎ | ◎ |
変更・取消の 柔軟性 | ◎ | ○ | × | × |
問題発生時の サポート | ○ | ○ | △ | × |
変更や取消の柔軟性や手数料もかかりにくい点は評価できますが、購入価格がとにかく高額なため、あまり適しているとは言えないでしょう。
場合によっては格安航空券と同等の価格で購入でき、その他の面も問題ないため、業務渡航での利用に適していると言えます。
コスト面では優秀ですが、変更や取消の柔軟性が低く、旅行会社によってはサポートも不安が残ります。海外での展示会やカンファレンスなど、確実に日程が変動しない場合であれば、利用を検討しても良いかもしれません。
安さは魅力ですが、出張者の負担を考えると、海外出張での利用に適しているとは言えないでしょう。
この4券種の中では、正規割引航空券(PEX航空券)が業務渡航に適しているでしょう。
航空券の手配の際は、価格だけではなく変更取消の運賃ルールや手荷物の規程も確認することをオススメします。
航空券を予約する際に、ひとつのフライトに複数の便名が表示されているのを目にされた経験があるのではないでしょうか。これは共同運航便(コードシェア便)と呼ばれ、2社以上の航空会社が1社の飛行機で旅客の運送を行うことです。
出張での利用も問題ありませんが、特徴を知っておくことで戸惑うことなく活用出来るようにしましょう。
共同運航便を利用する際の注意点を以下の便を例に解説します。
こちらの便は、3社によって運航される成田-シカゴのコードシェア便です。
運航会社:全日本空輸(ANA)
共同運航会社:タイ国際航空、ユナイテッド航空
ここで運航会社とは、機体を含めて主たる航空会社としてフライトを運航する企業であり、共同運航会社とは運航会社と提携しており、機体における座席の一部を共有している航空会社を指します。共同運航を活用することで、航空会社は自社の航路を拡大することが可能になります。
便名から運航会社と共同運航会社を見分けることが可能です。
運航会社:航空会社コード(2レター)+数字(1~3桁)
→NH12
共同運航会社:航空会社コード(2レター)+数字(4桁)
→TG6176、UA7926
コードシェア便はすべて4桁の数字になるため、航空・旅行業界では「4桁便」と呼ばれることもあります。
※国内線はオリジナル便(運航会社)の場合も4桁便で表示されることがあります。
予約をした航空会社のカウンターでチェックインします。
ANAで発券:ANAのチェックインカウンターへ
タイ国際航空、ユナイテッド航空で発券:それぞれのチェックインカウンターへ
運航会社の機材を使用します。今回はANAの機材に搭乗することになります。
運航会社のサービスや規程が適用されます。運航会社によってサービス内容や手荷物の規程が変わることもあるので注意しましょう。
今回の例ではANAのサービスや規程に従います。
一般的に共同運航会社で予約した場合のマイル積算率は悪くなります。コードシェア便では、航空アライアンスやキャリア別の提携により、相互でマイレージ加算が可能な場合も多いです。
一般的に共同運航会社で予約した場合、オリジナル便で予約した時よりも座席指定が出来ない可能性が高い傾向にあります。
予約をした航空会社に問い合わせます。なお、共同運航会社で予約したフライトを変更・取消をする際、共同運航会社のコールセンターにて、運航会社に連絡するよう指示が入る場合もありますのでご注意ください。
ANAで発券:ANAのウェブサイト、コールセンターへ
タイ国際航空、ユナイテッド航空で発券:それぞれのウェブサイト、コールセンターへ
コードシェアを利用することで、世界各地へのアクセスが良くなりました。業務出張においても乗継地や時間帯の選択肢も増えるため、利用価値が高いと言えます。ただし、運賃規程やマイレージ加算、座席指定の面では制約があるので、バランスを見て利用を検討しましょう。
券種や予約条件により座席指定が出来ないことがあります。その他にも混雑状況や配慮が必要な方の搭乗等により、航空会社がシートマップを非表示にしたり、座席変更を行うことがあります。
本来は必要ありませんが、印刷しておくとチェックインカウンターでのやりとりをスムーズに行えます。また、ウェブサイトや電話で予約変更等をする際に予約番号が必要になるので、海外出張の際はeチケットのコピーを予備しておくと良いでしょう。
予約する航空券によって発券期日がそれぞれ設定されます。発券(=支払)は、航空券のルールに従う必要があるため、スケジュールが未確定の段階で予約をしたい場合は、即日発券ではない航空券であることを確かめましょう。
重複予約は取消の対象となります。これは発券している場合も対象となる可能性があり、一度取消しをされると救済措置はありません。複数箇所で予約をしている場合は、すぐに予約をひとつにしましょう。
海外航空券の種類について解説しました。それぞれに一長一短がある航空券種ですが、一概に「この航空券がベスト!」と言うことはできません。それぞれの特徴をある程度理解しておくことで、海外出張のスケジュールに合わせた適切な選択ができると良いのではないでしょうか。
次回は海外旅行保険の付保について解説します。