前回は、企業や個人のCO2削減への具体的な取り組みについてご紹介しました。最後は実際にCO2排出量削減に取り組む企業の事例をご紹介します。実際に企業が行っている工夫を知ることで、自社への取り組みの参考にしてみましょう。
出張におけるCO2削減への取り組みは海外の企業が積極的に取り組んでいます。世界ではどのような取り組みをしているのか、事例をご紹介します。下部リンクのBTN掲載の記事をご覧ください。
2021年、武田薬品は、製薬会社が優先的に利用するユナイテッド航空とデルタ航空の2社に対して、大幅な排出量軽減が見込まれる持続可能な航空燃料(SAF)に投資しました。これにより、武田薬品は持続可能な航空燃料(SAF)に投資した最初の製薬会社となりました。
旅程管理などの出張に必要な機能だけでなく、航空券、ホテル、レンタカーなど、分類されたCO2排出量の指標を出張者が閲覧ができます。これにより、排出量削減に対する個人の影響という概念を浸透させ、社員がより環境負荷の低い選択を取れるように促しています。
出張の基礎にCO2排出量削減目標を設定し、目標達成に近づくほど経営幹部の報酬が大きくなる仕組みを構築しました。会社全体で2030年までに出張の排出量を2019年と比較して半減させる目標を定め、実質的な目標達成の工夫をしています。
国内出張は最重要課題と定め、環境の観点から国内出張承認を必須化にしました。また、日帰り出張を控え、1回の出張で複数箇所訪問するスタイルが増加しています。
出張は自社のCO2排出量全体の70%以上を占め、果たすべき大きな役割があると述べ、2025 年までに実質ゼロを達成すると公約を掲げました。具体的な取り組みは、日帰り出張の廃止、移動は飛行機よりも鉄道での移動を奨励するなどです。
上記で定めた目標を実行することが自社の最大のハードルと認識し、出張移動の公共交通機関の推奨フローを作成しました。新幹線で移動可能な航空路線を全てシステムに認識させ、飛行機を予約した際は、社内への予約通知が流れ、航空券を予約したことを組織が可視化できる仕組みを作りました。その際、新幹線で移動可能なルートの場合は、航空券のキャンセルを推奨し、出張者へ新幹線もしくはWEBミーティングを促す取り組みを実施しました。
CO2排出量は移動量を減らすだけでなく、賢い移動手段を選択することによっても削減できると考え、利用航空会社をエールフランス、KLMオランダ航空にしていしました。さらに、その中で一番利用している路線を持続可能な航空燃料(SAF)のみを使用する取り組みを実施しました。
シーメンスはホテルの予約サイト会社のホテル ポータル(HRS)が作成する、グリーンステイ イニシアチブを企業として初めて採用しました。グリーンステイ イニシアチブとは、HRSが展開する予約サイトで環境基準に基づいて宿泊施設を評価し、予約ツールで緑の葉のロゴが付いている条件を満たすホテルが一目で分かる機能です。シーメンスは出張者へこのツールの使用を義務付け、予約時点で出張者がより環境に優しい選択をできるように誘導する仕組みを構築しました。
国内大手2社はCO2排出量削減に対する取り組みはもちろん、SDGsの全項目に対して積極的に取り組んでいます。今回は「環境」に焦点をあて、その取り組みの一部を紹介します。
JALは環境に対する取り組みが早く、SDGsとして世界中が取り組む前の2009年に、アジア初の非可食原料(植物:カメリナ)によるSAFを用いた試験飛行を実施しました。さらにこの植物を使ったSAFの搭載は世界で初めての例です。その他にも、出張路線である2017年11月にシカゴ・オヘア国際空港から成田空港、2019年1月にサンフランシスコ国際空港から羽田空港への国際線定期便に、SAFを搭載しました。
ANAでも、植物油、糖、動物性脂肪、廃棄バイオマスなど持続可能な供給源から製造されるSAFの開発と定期便への搭載の取り組みを行っていますが、「ANA Green Jet」を始めとするサステナブルな工夫をしています。例えば、座席のヘッドレストカバーに環境に配慮した素材「ヴィーガンレザー」を導入、機体の側面に、鮫肌加工のフィルムを貼り付けることで、CO₂排出量削減に貢献、機内サービスで使用する、食器、コップの蓋やスプーン・フォークなどのプラスチック製品の廃止、など、燃料以外の様々な分野でCO2削減の取り組みを実施しています。
今回は3回に分けてSDGsの観点から、出張のあり方を考えるコラムを紹介しました。環境への取り組みは個人のアクションと企業のアクションが要です。紹介した内容をもとに、あなたの職場でもSDGsの取り組みを始めてみましょう。
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