一般社団法人日本在外企業協会が2023年に実施したアンケートによると、海外安全対策マニュアルを整備している企業は75%にも及ぶことが分かります。
企業にとって、事業の成長を目指すうえで、海外進出は欠かすことのできない取り組みと言えるでしょう。一方で、戦争・テロやCOVID-19をはじめとする感染症などのリスクが高まる現在において、海外出張における危険回避策を検討することは重要な取り組みとなります。
この記事では、海外出張における危機管理について解説します。具体的には、海外出張におけるトラブルの実状や安全対策のポイント、具体的な対応策等について解説します。
もくじ
海外においてトラブルに遭遇する割合はどの程度でしょうか。外務省の「2022年(令和4年)海外邦人援護統計」によると、年間15,000名~20,000名の邦人渡航者がトラブルにあっているようです。年間の渡航者数が1,000万人程度と考えると、1000人に1~2名は何らかのトラブルにあうことになります。
もちろん、リスクの高さは国によって異なります。特に中東エリアや西アフリカエリアではテロなども多く、気を付けるべきと言えるでしょう。
海外出張時のトラブル・犯罪は何が多い?テロを気を付けるべき国は?
海外渡航中に遭遇しやすい犯罪被害としては以下が挙げられます。
出張を管理する部署またはトラベルマナージャーにとって出張者向けの安全対策は非常に難しい取り組みと言えるでしょう。以降では具体的な取組事項について整理しますが、まずは対策のポイントをせいりしましょう。
出張におけるリスク管理のポイントとしては以下の点が挙げられます。
上記の点を整理したうえで、自社の出張危機管理マニュアルを作成していきましょう。
出張におけるトラブルを未然に防ぐ、あるいは、トラブル発生時の被害を最小化するためにはどのような取り組みが有効でしょうか。ここでは具体的な取り組み施策を紹介します。なお、ポイントは、企業だけでなく、出張者自身も危機管理意識を持ち、自身の安全を確保するための取り組みを積極的に行うように心がけましょう。
海外出張時での安全対策・管理体制に関する8つのポイントを紹介
いかがでしょうか。各社とも様々な取り組みを行っていますが、できることから始めるのが良いでしょう。
事前に渡航国の情報収集をしたり、社員に安全管理の研修を行ったとしても、残念ながらトラブルを避けられない場合もあります。そのような場合を想定し、出張者及び企業の負担を軽減するための対策もしておきましょう。具体的には海外旅行保険の付保や労働災害の整理です。
海外旅行保険は全ての出張者が加入すべきです。海外では医療費が高く、病気になったり、現地トラブルに巻き込まれてケガをした場合の医療費は数百万に達することもよくあります。それらの支払いは企業が負担することになりますが、現地で支払いを求められる場合がほとんどなので、金銭面だけでなく、手続きの面でも負担が大きいです。海外旅行保険を付保していれば、金銭的負担を解消できるだけでなく、キャッシュレスで病院を利用することができるので必ず付保しておきましょう。
出張時は海外旅行保険に入りましょう。海外旅行保険の基礎とメリット
出張時のケガは原則、労働災害の対象になります。ただし、労災と認められないケースもあるので社内でしっかりと定義しておくことを推奨します。出張と労災の関係について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
出張が決まったらまずは渡航先の国の大使館及び領事館のサイトにアクセスしましょう。それらのサイトには現地への出入国に関する最新情報が記載されています。また、現地の治安が不安定な場合などは注意喚起を促す情報が配信されることがあるので、出張準備時だけでなく、渡航当日も見ておくとよいでしょう。
出張において入手すべき情報としては、出入国の情報だけではありません。その他にも感染症などの医療関連の情報や天候、テロに関する情報も取得する必要があります。具体的には下記のようなサイトを参考にしましょう。
医療の情報:世界の医療事情
天候やテロなどの情報:海外安全ホームページ
出張者の安全を守る!出張時に役立つ安全・リスク管理関連の情報サイトを紹介
ここまでは出張者や管理者が自発的に情報を取りに行くことを前提に、リスク管理に役立つ情報サイトを紹介してきましたが、出張管理システムを活用すると、現地の情報と出張者の情報を紐づけることが可能になり、出張者の安全を更に高めることができます。出張管理システムを活用した出張者の安全・リスク管理方法についてご興味のある方はこちらをご覧ください。
この記事では、出張時のリスク管理に焦点を当て、リスクの実態や対策のポイントについて整理しました。企業にとって出張者の安全は何よりも大切であることはもちろんですが、実際に対策することは非常に難しいのが実情です。紹介した出張管理システムを活用するなど様々な手法を用いて、できることから一つずつ進めてみましょう。