出張が必要な状況が発生した際に、最初に行うことは、出張命令です。出張命令とは、上司などの出張命令権者が出張を了承したことを明確にするための行為です。口頭やメール、チャットによる上司とのやり取りを出張命令として扱うケースが多いですが、出張命令書を作成している企業も一定数います。特に海外出張においては出張命令書の提出を規程に明記している企業も多いでしょう。
この記事では、出張命令書の記載事項や記載のメリット、注意点について解説します。
出張命令書とは、従業員が出張するにあたり、上長をはじめとする出張命令権者が出張内容などを明確にして承認することを目的として作成される書類です。なお、実務的には、出張者が内容を記載したうえで上長に提出し、上長はその内容を確認した上で押印するケースが多いです。
出張命令書に記載する項目としては、以下の5点です。
誰が出張するかを明確にします。なお、規模の大きな会社だと同姓同名の社員がいる場合もあるため、部署名や役職、社員番号を記載すると良いでしょう。
出張後に提出する出張報告書における成果を明確にするためにも、出張の目的を記載しましょう。出張の目的としては、取引先との商談、展示会への参加、支店のフォローアップ、視察などがあります。何を達成するための出張なのかを明確にしましょう。
出張者の安全管理や出張後の日当処理のために出張期間を明確にします。なお、本項目については、例えば、「5月10日から5月15日」など出発日と到着日のみ記載する企業もあれば、訪問先について一つ一つ記載する企業もあります。海外出張では、複数の国を訪問するケースもあるので記載レベルを細かくするとよいでしょう。
先ほどの出張日程と併せて、出張先の場所(住所)や取引先名、現地で会う先方の担当者名などを記載しましょう。
訪問先を明確にすることでカラ出張などの不正を防止することにも役立ちます。
出張時の不正防止について知りたい方はこちらをご覧ください。
出張精算時に気を付けるべき不正経費とは?防止策と対処方法について解説
出張命令書は、大使館のページなどを見ると参考になるサンプルがあります。例えば、韓国大使館は、海外出張命令書の見本を掲載しています。
出張費用としては、交通費や滞在費、その他諸経費を記載します。この段階では正確な出張費の見積もりをとっていないケースが多いため、概算で記載し、全体としてどの程度の費用が発生するかを明確にすることが目的です。
出張に対する承認を出すという点においては、出張命令と出張申請に違いはありません。それでは、両者にどのような違いがあるかというと以下の通りです。
業務の目的を達成するための手段として、出張することが適切であるかを判断します。テレビ会議などを活用することで、出張をしなくても目的が達成できるケースもあるため、出張することの妥当性を上司が確認し、必要と判断した場合は出張命令書を提示します。
また、海外出張においては、目的達成の手段としての妥当性に加え、地域の安全性などを含めて多面的に判断するのが出張命令の特徴です。特にコロナ以降は、出張命令に対する意識が高まっています。
参考:海外出張の本格再開に必要なことは? 通信機器レンタルの状況から見える企業の動向から今後の展望まで
出張することを前提に旅費などの確認を行います。具体的には利用する移動手段や宿泊施設が社内の旅費規程を満たしているか等をチェックすることが主な役割になります。
出張は通常の勤務と比較すると、経費がかかる業務といえます。そのため、出張の費用対効果(ROI)を意識することが重要になります。出張命令書を記載することで、出張者の目的意識も高まり、成果を上げようという意識が強まります。
出張命令書を作成すると、出張者自身がどういった費用が発生するかを予め把握できるようになります。そのため、領収書の取り忘れが減り、出張後、スムーズに経費精算へと移行できます。また、経理部門も出張命令書に記載されていない費用が認識しやすく、出張経費としての許可に関するトラブルを防ぐことが可能です。
出張においてはカラ出張や出張先での経費水増しの問題があります。しかし、出張命令書を作成することで、上長の承認無しに出張が出来なくなるため、カラ出張を防ぐことが可能です。また、取引先などを明記することで、疑わしい経費が発生している場合に、妥当性を調査することが容易になります。同時に、出張者にとっても不正の抑止力につながります。
出張命令書は、出張業務の申請フローにおける最初のプロセスであり、このプロセスが完了しないと、航空券や宿泊施設の予約を行うことができません。
出張までの期間が短い場合などに、上長が外出していて承認がもらえず、航空券や宿泊施設の料金が上がるといった場合もあります。最悪の場合、飛行機が満席になり、渡航できないといった事態になりかねません。
そのため、上司が外出先でも承認できるように電子承認システムの整備や、代理承認の制度等を作っておきましょう。
出張命令はあくまでも出張を命令するための工程であり、その後、出張者が出張申請書を作成し、許可を得るプロセスが存在します。そのため、出張命令段階で、細かい費用を調査しても、申請時に料金が上がってしまう可能性もあるため、この段階では費用は概算に留め、詳細な調査は出張申請時に旅行会社などに相談しながら確認していく方法が効率的です。
BORDERでは、出張命令書・出張申請書・出張報告書・旅費精算書のテンプレートを提供しています。これらの資料が欲しい方はこちらよりダウンロードが可能です。
出張命令書・出張申請書・出張報告書・旅費精算書が含まれ、共通シートに入力することで各書類にデータが反映されます。(それぞれの資料を単独でご利用いただくことも可能です)
出張命令書を取り入れていない企業は多くいますが、出張費用の削減や出張における費用対効果の向上において費用に役に立つ取組と言えます。業務負荷を高めないように意識しながら、出張業務プロセスに組み込んでいくとよいでしょう。
出張申請書について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
出張申請テンプレートあり。出張申請書の作成方法について解説します。