海外出張において渡航先での宿泊は必須となります。また、国内出張でも遠方であれば現地で一泊することは頻繁に起こりえます。このように出張においてホテル利用は切っても切れない存在と言えるでしょう。
一方で、近年はインバウンドの影響によりホテル料金が高騰しており、企業が設定する旅費規程の上限を超えることも頻繁に発生しています。その結果、企業はホテル利用の基準を見直す必要があります。
この記事では、出張におけるホテルの利用について、宿泊費用の相場からホテル選びの視点、利用後の経費処理の流れについて解説します。
もくじ
管理者にとっては、ホテルの利用に関するルールについてどこから始めればよいか迷う方もいらっしゃるかと思います。そこで、まずは出張時にホテルを利用する際に押さえておくべきポイントを記載します。なお、国内出張と海外出張で流れが変わってくることも多いので分けて整理すると良いでしょう。
以下では上記のプロセスについて順々に解説します。
旅費規程で定めるべきは宿泊費用の上限額です。近年、技術の変化によりホテル側も需給に応じて料金を随時変動するようになりました。また、インバンド観光客の影響によりホテルの需給バランスが崩れ、ホテル代が高騰傾向にあります。そのため、企業にとっては出張における宿泊費の上限額の設定が難しくなりました。
そうした中、ホテルの上限額はどのように設定すべきでしょうか。基本的な流れとしては、各エリアの宿泊相場を確認します。ただし、宿泊相場は取得が難しいため、出張頻度の多いエリアの実績データをもとに平均額を設定するのもよいでしょう。そのうえで、他のエリアと相対比較し、各地の宿泊上限費用を決定するとよいでしょう。
出張費の相場:宿泊費編(2024年3月更新)世界主要都市のホテル相場
金額と同様に重要なのが、ホテルのランクです。出張は従業員の拘束時間が多くなりがちなので、さらに宿泊先が小さい、不衛生、危険を感じるようなことがあると、出張者のストレスが増し、出張に対してネガティブなイメージを持ってしまうため、やはり一定の質も担保したうえで上限額を設定するとよいでしょう。
幸いなことに、ホテルには一定の品質に基づいたランクが存在します。ランクは星として表現されていることが多く、予約サイトごと(例:楽天トラベルのホテルの基準)にそれぞれの星の基準が明確に記載されています。また、ホテルの格付けを専門に行う機関もあるため、それらの数値を参考にしながら使用するホテルのレベルを設定すると良いでしょう。
ホテルのランクってどうやって決まってるの?ホテルの星の基準を解説します。
ホテルの選定基準を規定する項目としては、上記の金額と品質がメインになりますが、その他に何があるのでしょうか。代表的なものとしては立地が挙げられます。都会エリアでない場合、出張先のホテル数も限られており、仮に上限額を超えていてもそのホテルを選択するのが合理的と言えるでしょう。また、長期で滞在する場合は、部屋の付帯設備(例:キッチンスペース等)も考慮しましょう。
賢いホテル選びの方法が知りたい方はこちらをご覧ください。
出張時の宿泊施設の利用について旅費規程に定めたら、次は経費精算の流れを整理しましょう。経費精算にあたっては仕訳の整理と経費精算の流れを明確にするのが重要です。以下では、会計上の勘定科目、出張費精算の流れについて説明します。
出張でホテルを利用した場合は、旅費交通費として仕訳するのが一般的です。なお、海外出張においては、不課税となるので気を付けましょう。また、宿泊先では、宿泊税や温泉税が発生する場合があります。これらの費用については、ホテルの請求書の記載方法によって仕訳方法が変わってきます。
具体的には宿泊税の記載が明記されている場合は租税公課(不課税)、記載されていない場合は旅費交通費(課税)として処理するのが一般的です。
出張先で支払う宿泊税とは?宿泊費・宿泊税の勘定科目や仕訳方法も解説
ホテル代の精算の流れについては、出張者の立替があるか否かによって異なります。出張者自身が立て替えた場合は、出張終了後に旅費精算を行う必要があります。その際、ホテルの領収書が必要になるので忘れずに取得しましょう。領収書の取得方法は、公式サイトで予約した場合とホテル予約サイトで予約した場合で異なるので注意しましょう。
ホテルの領収書の発行方法や分割方法、再発行の流れを解説します
なお、旅行会社や出張管理システムを通じて予約した場合は、企業に一括請求する場合が多いため、出張者自身による旅費精算は不要となります。
最後に海外出張でホテルを利用した場合の注意点をお伝えします。海外では、チップやデポジットなど国内ホテルにはない様々なルールが存在します。特にデポジットについては、チェックイン時にクレジットカードから自動的に引き落とされることが多いため、出張終了後に返金されているかを確認しましょう。確認方法としては、ホテルチェックアウト時に利用明細書を受け取ると良いでしょう。万が一、返金されていない場合は、予約元に連絡し、返金処理を依頼しましょう。
企業の管理者であればホテルの法人契約を検討した方もいらっしゃるでしょう。法人出張は、特別価格の提供や朝食の無料提供などのメリットがある反面、予約サイトや出張管理サービスでは予約できないといった課題もあります。同じエリアに出張する傾向が高い企業にとっては得られるメリットが大きいので検討するとよいでしょう。
ホテルの法人契約・コーポレート契約をしたい企業向けに解説します
この記事では、出張におけるホテルの利用に焦点を当て、利用可能なホテルの基準設定方法や利用後の経費処理の流れについて解説しました。出張の本業は、事業の成果を残すことであり、そのためには気力・体力ともに充実した状態で業務に向かう必要があります。現地での滞在施設は、気力・体力に大きな影響をするために、経済合理的なホテル選定をルール化しましょう。