従業員が初めて海外出張に行くことになった場合、御社では出張者に対し適切なフォローができていますか。国内出張とは異なり、パスポートが必要になるなど準備が複雑なのが海外出張です。また、航空券の手配などもどのように行えばよいのか迷ってしまうかもしれません。この記事では、出張前から出張後まで必要になる物事について時系列で解説します。
~出張前の準備~
海外出張が決まって最初にすべきことといえば、パスポートの準備でしょう。パスポートは申請してから受領まで約一週間ほどかかります。また申請にあたっては戸籍謄本や住民票が必要となりますが、居住地と本籍が異なる場合は取得にかなりの時間を要します。それらの資料の取得も考慮したうえで余裕を持って申請を行いましょう。
なお、パスポートの申請にあたってローマ字表記が気になる方もいらっしゃると思います。パスポートにおけるローマ字表記にあたってはヘボン式を採用することになっています。いつも利用しているローマ字と異なる場合があるので注意しましょう。
パスポートの取得と同時に進めたいのが、渡航先に関する情報収集です。日本のパスポートは多くの国にビザなしで入出国することができますが、特定の国においてはビザや電子渡航手続きが必要になる場合があります。また、アフリカ等へ出張する場合は、事前の予防接種が義務付けられている場合もあります。ビザの取得や予防接種は、申請から完了まで一か月以上かかる場合も多いため、出張が確定した段階で渡航国の情報収集を開始しましょう。取得しておきたい情報としては下記の通りです。
渡航先への入国にあたりビザが必要であることが判明した場合は、速やかにビザ申請の準備をしましょう。近年は、インドなどオンラインでの申請が可能なケースが増えていますが、大使館へ訪問して申請しないといけない場合もあるので注意が必要です。また、申請が不安な場合は、ビザ取得の専門業者に依頼すると良いでしょう。
海外出張準備:ビザ(査証)の取得方法。必要な書類はなに?申請場所は?
アフリカへ渡航する場合などは予防接種が必要になることがあります。その際、ただ接種すればよいだけではなく、所定の様式に沿った接種証明書が必要になるので注意が必要です。接種証明書は一般の病院で対応してくれるケースもありますが、トラベルクリニック(海外渡航専門外来)を利用した方が書類の受け取りなどはスムーズなのでおすすめです。
なお、予防接種は一定の期間を開けて複数回接種する必要があるワクチン等もあるので気を付けましょう。
海外出張準備:予防接種の受け方やおすすめのトラベルクリニックを紹介
出張といえば移動手段や宿泊施設の確保が必要です。その他にもWiFiなどの通信手段や海外旅行保険も準備しておきましょう。また、現地でレンタカーを利用する場合などは、現地ではなく出張前に予約しておくと安心でしょう。
海外出張に欠かせないのが航空券と宿泊施設の予約です。海外航空券は、国内航空券よりも高く、取消や変更のルールも複雑なので事前に確認してから購入しましょう。また、海外フライトやホテルは高額になるケースが多いため支払い方法についても社内で確認しておきましょう。
出張時のホテル手配のまとめ:宿泊相場からホテル選定方法、精算の流れを解説
多くの出張者は出張先でパソコンを利用するでしょう。その際にインターネット環境が必須になります。現地のホテルやカフェにも無料のWiFiはありますが、セキュリティの観点からポケットWiFiやeSimを用意しておきましょう。
海外出張の通信手段。モバイルWiFiや海外パケット放題など何を選ぶべき?
新型コロナウイルスやテロの影響等により、海外出張時の安全管理に対する意識は高まっています。海外でトラブルに巻き込まれた場合、病院などを利用するケースがありますが、海外での医療費は高額になりがちです。海外旅行保険に入り、いざという時の対策をしておきましょう。
なお、海外出張の頻度が多い企業においては、保険会社と企業包括契約を締結することでより柔軟な保険利用が可能になります。
法人単位の海外出張保険|海外旅行保険企業包括契約を詳しく解説
製造事業者の方や展示会に参加される企業は機材を運ぶために、海外出張先でレンタカーを利用する場合もあるでしょう。多くの場合、空港に隣接するレンタカー会社で借りることが多いですが、オンラインで事前予約しておくと安心でしょう。なお、レンタカーの予約にあたっては必要な書類などが細かく定められているケースが多いのでしっかりとチェックしておきましょう。
出張時のレンタカー予約方法や精算方法、会計仕訳を解説します。
最後に出張に必要な持ち物を用意しましょう。持ち物は、業務で利用するものと衣服など出張中に利用する日用品に分けて整理しましょう。日用品に関しては、予め持ち物チェックリストを作成し、それらを一つ一つ用意すると漏れがなくなりおススメです。なお、薬などの常備薬も忘れないように気を付けましょう。
なお、長期出張の場合は、短期の出張とは異なり、渡航先に持ち込むものと現地で調達するものを分けて考えるとよいでしょう。例えば、シャンプーや化粧水などの日用品は現地で調達したほうが荷物が減らせて効率的といえるでしょう。同様に洗濯物を干すハンガーなども現地で取得してもよいかもしれません。
長期出張マニュアル:持ち物や滞在施設の選び方、期間中に気を付けることを解説
また、用意した荷物は用途に合わせて収納場所を変えるとよいでしょう。具体的には業務で使用するものは手荷物とし、日用品はグルーピングしてスーツケースにしまう方法です。なお、書類を持参する場合は、ロストラゲージ(荷物紛失)を想定し、印刷用のデジタルデータを用意しておきましょう。
~出張当日~
いよいよ出張当日です。まずは空港にある航空会社のカウンターに行きチェックインや荷物を預けましょう。チェックインに関しては、事前にオンラインで行うことで当日のバタバタを回避することができます。その後は、保安検査(セキュリティチェック)を受け、出国審査へと進みます。
海外出張当日のポイント:空港でのカウンターチェックインから出国審査までを解説
無事に荷物を預け、出国審査が終わったら、出発までしばしの休憩です。出発までの時間は、空港を散策するのもよいですし、軽食をつまものも一つの選択肢でしょう。ただし、少なからず荷物を持っていると思うので置き忘れなどには気を付けましょう。また、海外では置き引きやスリなども意識しておくと良いでしょう。
疲れを取りたい方や出発前に英気を養いたい場合はラウンジを利用するのも良いでしょう。ラウンジは会員限定の施設や有料で利用できる施設があります。施設によって付帯するサービスが異なるので事前に利用したい施設を確認しておきましょう。
~出張終了後~
出張から無事に帰任したら、お世話になった取引先や現地の支社にお礼メールを打つのがスマートです。相手の記憶が薄れる前に素早くメッセージを送りましょう。メッセージの内容は相手との関係性によって異なりますが、取引先や営業訪問先であれば、次につながる案内を出しましょう。一方、現地の支店や協力会社であれば、チームワークの向上のために感謝の気持ちを伝えるとよいでしょう。
<例文つき>出張のお礼メールの書き方を解説。出張の挨拶で取引先と良好な関係を築こう
職場へのお土産はあくまでも任意ですが、出張の準備でお世話になった方や出張期間中、業務を引き継いでくれた同僚に対し、お土産を渡すと関係は良好になるでしょう。お土産は生ものは避け、小分けに包装されたお菓子などが無難です。お世話になった方々に声をかけて渡すのもよいですし、オフィスの一角にメッセージを添えて置くのも良いでしょう。
この記事では、出張前から出張後まで必要になる物事について順を追って解説しました。海外出張に慣れている方であればそれほど困らないかもしれませんが、初めての海外出張や頻度が少ない方にとっては海外出張は一大イベントと言えます。不慣れなエリア、不慣れな言語で生活するのは想像以上に不安が伴うため、準備を怠ることなく、万全の状態で出張に向かいましょう。