海外出張に行く際に、ビザや航空券の手配が済んだら、次に海外旅行保険の契約を進めましょう。クレジットカード付帯の保険でもいいや、と思ってしまいますが、海外では自己負担が高額になる可能性が高く、クレジットカード付帯ではカバー出来ないこともあります。社員の安全管理という面でもしっかりとした補償の保険を検討しましょう。
本コラムでは、海外旅行保険での補償内容や、クレジットカード付帯の保険との違いについて解説します。
海外旅行保険とは、現地滞在中に怪我や病気をしたり、他人に損害を与えたり、持ち物を盗まれたりと、旅程にアクシデントが発生し想定外の出費があった場合の損害を補償するものです。
ジェイアイ傷害火災保険が公表している2018年度の海外旅行保険の事故データ(データで見る、海外旅行保険の必要性)によると、海外旅行保険の事故発生率:3.70%(27人に1人)とのことです。
出典:データで見る、海外旅行保険の必要性
また、保険の窓口インズウェブで調査した海外旅行保険に関するアンケートによると、海外旅行保険に加入して海外旅行に行く人は、30.4%とのことです。
保険事故が発生した際に保険金が支払われます。
保険金の支払いには、保険事故が発生したことを証明する必要があります。盗難や事故であれば、警察や消防署に盗難届受理票や事故証明書を発行してもらったり、領収書を残しておかなければなりません。
キャッシュレス対応が可能な提携病院や日本語対応が可能な病院を紹介してもらえたり、通訳サービスが利用できます。
また、海外では支払能力を証明出来なければ、治療を受けられないというケースもあります。保険証書を提示することで余計なトラブルは回避しましょう。
一部の国やビザの申請において、海外旅行保険の加入が必須になっています。補償内容や補償金額が指定されているので、事前に確認しましょう。
出入国関連の情報は以下をご覧ください。
海外旅行保険での主な補償内容を紹介します。この他にも保険プランによって様々な補償を受けることが可能です。
傷害死亡 | 渡航中のケガにより死亡した場合 |
疾病死亡 | 渡航中に病気により死亡した場合 |
傷害後遺障害 | 渡航中のケガにより後遺障害が発生した場合 |
傷害・疾病治療費用 | 渡航中に病院で治療を受けた場合 |
救援費用 | 現地に親族等が駆け付け交通費や宿泊費が発生した場合 |
緊急歯科治療費用 | 渡航中に歯科治療を受けた場合 |
航空機遅延費用 | 遅延や欠航により宿泊費や交通費が発生した場合 |
航空機寄託手荷物遅延等費用 | 航空会社に預けた荷物が届かず代用品の購入が発生した場合 |
旅行中事故緊急費用 | 航空会社に預けた荷物が届かず代用品の購入が発生した場合 |
テロ等対応費用 | テロにより帰国便に乗れず宿泊費や交通費が発生した場合 |
携行品損害 | 持ち物の盗難や損害が発生した場合 |
賠償責任 | 他人や物品に損害を与えた場合 |
弁護士費用 | 保険事故が発生し弁護士に賠償請求等を依頼した場合 |
次に実際に起こった保険事故の事例を紹介します。
友人の運転する車に乗っているときに、車がスピン。右手を骨折、手術後5日間入院。
治療費用 | 2,291,236円 |
咳と吐き気で受診したところ、急性心筋こうそくと診断され、そのまま入院した。救援のため、日本から家族がかけつけた。
治療費用 | 10,000,000円 |
救援者費用 | 3,114,449円 |
合計 | 13,114,449円 |
発熱と咳、歩行困難の症状があり救急車で搬送。新型コロナウイルス感染症と診断され、そのまま15日間入院した。
治療費用 | 2,639,816円 |
車に搭乗中、前方の車に追突し、右足親指を切断した。
後遺障害保険金 | 5,000,000円 |
ホテルでバスタブのお湯をあふれさせ、階下と周囲の部屋が使用できなくなったことで、ホテル側から損害の賠償を求められた。
賠償責任保険金 | 12,438,470円 |
参考:補償内容 | 新・海外旅行保険【off!(オフ)】 | 【公式】損保ジャパン
クレジットカード付帯の保険があるので海外旅行保険への加入は必要ないと考える方も多いのではないでしょうか。実際にはクレジットカード付帯の保険では補償範囲や補償額が足りないということも少なくありません。ここではクレジットカード付帯保険について解説します。
クレジットカード付帯の保険には自動付帯と利用付帯の2種類があります。まずは、お持ちのクレジットカードがどちらなのか確認してください。
自動付帯は、旅行代金をそのクレジットカードで支払っていなくても所持しているだけで補償を受けることができます。
利用付帯は、旅行代金をそのクレジットカードで支払うことで補償を受けられるようになります。
つまり、旅行代金を手持ちのクレジットカードで支払っていないと、無保険で渡航することとなり大変危険です。その場合は海外旅行保険に必ず加入しましょう。
クレジットカード付帯の場合、補償範囲が海外旅行保険に比べ少なく、補償額も少額であることがほとんどです。また保険期間も制限付きであることが多く、長期の渡航には向きません。
大手の保険会社であることが多いです。サポートも大手の保険会社と同じ内容を受けることが出来ますが、これは補償内容に左右されます。
以上のように、クレジットカード付帯の保険は海外旅行保険に比べると制限が多く、補償やサポートも限定的であることが多いため、業務渡航には不向きと言えるでしょう。
ただし、最近ではクレジットカード付帯の保険を補足するタイプの海外旅行保険も登場しています。不足している補償金額や付けたいサポートのみをオプションで付保することで、保険料を安く抑えることが出来ます。
海外旅行保険を出張者に付保する方法は、出張者自身が契約する方法と、法人として保険会社と契約する方法の2通りがあります。
保険会社が提供するオンライン予約サイトなどで海外旅行保険を付保することが可能です。また、空港で海外旅行保険に付保することも可能ですが、オンラインでの予約に比べて料金が高い傾向にあります。
なお、個人で付保した場合は、出張者による立替・精算や出張期間が延長した場合の保険延長依頼が煩雑になるなど、業務効率という観点からは課題があります。
法人として保険会社と法人契約することで、出張者に対して海外旅行保険を付保することが可能です。保険会社との新規契約や契約更新などの手間は発生しますが、出張者による立替・精算が発生しない、保険延長などがスムーズに行えるなどといったメリットがあります。
契約代理店または保険会社で対応可能です。発行から手元に届くまで日数がかかることもあるので、早めに問い合わせましょう。
保険契約は付保期間を決めて申し込まなければなりません。出発後に保険期間の延長が必要な場合は、保険期間の終了前に契約代理店や保険会社に申し出ましょう。
被保険者は日本国内に在住している必要があります。
問題はありません。ただし、海外旅行保険は旅程が開始された時から適用になるため、事前に加入していれば自宅や会社を出発した時点から補償されます。
空港に向かう際に交通機関が乱れタクシー移動を余儀なくされた、空港到着時にフライトの遅延や欠航が確定しており予期せぬ出費が発生した、といった場合も補償の対象となる可能性があります。
保険料は申込のタイミングで変わることはないので、可能な限り前日までに加入しておきましょう。
海外旅行保険は日本出国までに契約している必要があります。
海外旅行保険について解説しました。海外で予期せぬトラブルに遭遇すると、金銭面もそうですが言語や制度の違い、保険事故に遭ったショックから本人がうまく対処しきれないこともしばしばです。そうした際の保険会社のサポートの有無で、出張者にかかる負担は大きく違ってくるでしょう。保険料は掛け捨てになるため、補償の手厚い高価格のプランは避けたくなってしまいますが、いざという時のために保険プランは慎重に検討してはいかがでしょうか。次回はPCR検査の受診について解説します。