出張先では、飛行機の乗り遅れや携帯品の破損など様々なトラブルが発生します。そして、場合によっては事故にあい、ケガをするケースもあります。出張中にケガをした場合に考えなければいけないのが、労災(労働災害)としての適用の可否です。
本記事では、出張と労災の関係性や適応されないケースなどを解説します。
労災(労働災害)とは、労働者が業務中または通勤中にケガをしたり病気にかかったりすること、また、それにより障害を負ったり死亡したりすることを指します。労災の被害に遭った労働者(被災労働者)は、労働保険の一つである労災保険に基づき、給付金を請求することができます。
労災には「業務災害」と「通勤災害」の2種類があります。
業務災害とは、業務上の原因によって、ケガをしたり病気にかかった労働者の災害事象が対象となります。なお、業務労災と認定されるには、業務遂行性と業務起因性を満たしている必要があります。
労働者のケガ、病気、障害、死亡が、使用者(会社)の支配下にある状態で発生していること。
労働者のケガ、病気、障害、死亡と会社の業務の間に相当因果関係があること。
通勤災害とは、通勤中にケガや障害を負った労働者の災害事象が対象になります。なお、通勤災害と認定されるには以下の要件が必要になります。
① 対象となる移動に発生していること ・住居地と就業場所の間の移動 ・就業場所から他の就業場所への移動・単身赴任先住居と帰省先住居の間の移動 ② 対象となる時期に発生していること 「住居と就業場所の間の往復」/「就業場所から他の就業場所への移動」の場合:就業日 「単身赴任先住居と帰省先住居の間の移動」の場合:就業の前日・当日・翌日 ③ 合理的な経路・方法による移動であること ④ 移動が業務の性質を有しないこと(業務災害ではないこと) |
出張では出張先に出向いてから帰着するまでの過程全般が事業主の支配下にあると解釈されるため業務として捉えることができます。そのため、出張先への移動時間に怪我をした場合でも業務災害と考えることが出来ると言われています。
ただし、出張中であっても、業務災害の要件(業務遂行性・業務起因性)ない場合は、通勤中の事故であっても労災認定されません。
例えば、以下の例では労災認定されない可能性が高いです。
労災保険法の適用については、法律の一般原則として属地主義がとられているため、国内の事業からの「出張」の場合には労災保険の対象となりますが、海外の事業に「派遣」され、その事業に使用される場合には労災保険の対象となりません。つまり、海外出張であれば労災の認定対象ですが、海外派遣の場合は労災の認定対象外となります。
海外出張と海外派遣の違いは下記の通りです。
海外出張:国内の事業場の指揮命令に従って業務に従事している場合 海外派遣:海外の事業場に所属して、その事業場の指揮命令に従って業務に従事している場合(例:海外関連会社へ出向する。海外支店に転勤する。) |
出典:海外出張先で事故に遭った場合、労災保険の適用はどうなるのでしょうか。(厚生労働省)
出張先で怪我をして病院を受診するとき、いつものように健康保険証を使おうと考える方も多いでしょう。しかし、出張先で起こった怪我の場合は、労災保険の給付対象になることから健康保険が使えません。
誤って健康保険を使った場合には、全国健康保険協会が負担した医療費を返金し、労災保険へ請求する手続きを取る必要があります。
海外での怪我は労災保険を使用して診察を受けることができません。そのため、海外では一旦自己負担で全額を支払い、帰国後に保険給付の申請を行います。海外での診察や治療は高額になるケースが多いので注意しましょう。
労働保険給付方法については、厚生労働省の下記のページを確認しましょう。
出張中のケガは、プライベートな時間を除けば、原則、労災保険給付の対象となります。
労働基準監督署の窓口に相談しながら、該当する労災保険給付を漏れなく請求しましょう。