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出張費用の勘定科目や課税処理、経費精算プロセスを解説
投稿日:2022.05.12 / 最終更新日:2025.01.11

出張費用の勘定科目や課税処理、経費精算プロセスを解説

出張費は、間接費(販管費)の中でかなりのウェイトを占めます。そのため、経理部門の皆さんにとっても馴染みのある費用といえますが、経費の範囲や上限が不明確であることも多く、経費処理に手間を要しているのが実態です。一方で、会計処理を使い方によって節税効果をもたらすことができ、出張者と会社の双方にとって重要な経費です。

本記事では、出張費の対象範囲や一般的な旅費交通費と交通費の違い、税区分など、出張費に関する基礎的な知識を説明します。加えて、経費精算処理の手続きや領収書の取り扱い等について解説します。

出張費用に関する勘定科目

出張では様々な支出がありますが、出張費用として認められる経費にはどのようなものがあるのでしょうか。また、それぞれの費用の勘定科目や税区分は何に該当するのでしょうか。ここでは主な出張費用について勘定科目や税区分を解説します。

出張費に含まれるもの

出張経費とは、会社の従業員や役員が業務の一環として遠隔地に赴く際に必要となる費用のことです。出張費に含まれる費用は通常、下記の費用が該当します。

出張に伴う交通費

出張の最たる費用が新幹線や飛行機での移動に伴う交通費です。また、出張先でのレンタカー費用やガソリン代、駐車場代なども交通費に含まれます。出張費用の大半をこの移動に伴う交通費が占めます。

出張に伴う宿泊費

国内出張においては、日帰り出張と宿泊出張がありますが、後者の場合、出張先近くのホテルや旅館等に宿泊することになります。これらの費用は、企業から従業員に宿泊費として支払われるため出張費に含めることが可能です。なお、宿泊費は役職や出張エリアに応じて定額となっているケースもあります。

一般的には国内では日当に含め、海外では実費精算というケースが多いのではないでしょうか。

出張先での食事代・接待費

出張先で取引先と食事した場合、その食事代を交際費用として支給する場合は出張費に含むことができます。食事代は、金額や内容により、会議費となるか、交際費となるかが異なるため、事前に所属先企業の規程を確認しましょう。

出張手当(日当)

前述の食事代とは異なり、ご自身が出張先でランチを食べた場合の費用などは出張手当として賄われることが多いです。また、ご自身での食事代のほか、現地での通信費やコピー代などの雑費は出張手当(日当)として扱われることが多く、これらの費用も出張費に含まれます。

食事代について整理すると、取引先との食事など営業との関連性が高いものは出張経費として申請ができるのに対し、ホテルでの朝食や移動中のランチなどについては出張手当(日当)の範囲内となるケースが多いです。ただし、出張手当に関して、出張旅費規程として整備されていない場合は、出張費に含むことができないので注意が必要です。

日当に関するコラムをご欄になりたい方はこちらをご覧ください。

出張時の日当はいくらが妥当?企業の相場と設定方法を解説

その他の出張関連費用

上記以外で出張関連費用と認められるものは、例えば以下のものがあります。

  • 出張先で急遽、資料を印刷する必要があり、コピー機を利用した場合の費用
  • 出張時の訪問先へお土産を持参した場合のお土産代

 これらの費用は出張費用として認められる場合があります。

出張費用の仕訳整理

出張費の勘定科目は交通費?旅費交通費?区分を解説

旅費交通費と交通費の違い

旅費交通費は、「旅費」と「交通費」から構成される勘定科目であり、遠隔地に行くために必要な新幹線、飛行機などの交通手段に要する「交通費」と、出張で遠隔地へ行った時の宿泊費や日当などの「旅費」が含まれます。

一方、交通費は、自宅から会社までの通勤費用や近隣(100km以内など)の取引先へ行く場合の移動にかかった費用を指します。具体的な費用としては、通勤用の定期代や電車賃、バス代、タクシー代、駐車場代などが該当します。

出張費の仕訳事例

先ほど、出張費を出張に伴う交通費、宿泊費、食事代・接待代、出張手当の4つに分けましたが、それらの費用の勘定科目は何になるのでしょうか。ここでは主要な経費の勘定科目を解説します。

新幹線代の勘定科目

新幹線は旅費交通費として仕訳します。

例:出張のために新幹線代を30,000円を現金で支払った。

借方金額貸方金額
旅費交通費30,000円現金30,000円

飛行機代の勘定科目

飛行機代も新幹線代と同様に旅費交通費として仕訳します。

出張費は、基本的には勘定科目「旅費交通費」として処理し、取引先との会食が発生した場合は、「交際費」として処理すると考えればよいでしょう。

例:出張のために飛行機代を40,000円を現金で支払った。

借方金額貸方金額
旅費交通費40,000円現金40,000円

出張先でのレンタカーの勘定科目

出張先でレンタカーを利用する場合は、旅費交通費として仕訳します。

例:出張先でレンタカーを借り、25,000円を現金で支払った。

借方金額貸方金額
旅費交通費25,000円現金25,000円

ホテル代の勘定科目

出張先での宿泊施設の費用についても旅費交通費として仕訳するのが一般的です。

例:出張先の宿泊施設をオンライン予約サイトで予約し、ホテル代25,000円を出張者自身で立て替えた。

借方金額貸方金額
旅費交通費25,000円普通預金25,000円

出張中の食事代の勘定科目

出張中のランチなど、自分で食べた昼食については、日当の範囲内に含まれることが多いので、経費精算対象外とすることが一般的です。

出張先での会食の勘定科目

出張先でお客様と会食となった場合は、金額によって仕訳方法が異なります。一般的には、金額が一人当たり一万円を超える場合は「交際費」、金額が一人当たり一万円以内の場合は「会議費」として仕訳します。

例:出張先のお客様と会食し、出張者自身が支払った。会食費用は一人当たり12,000円だった。

借方金額貸方金額
交際費12,000円普通預金12,000円

例:出張先のお客様と会食し、出張者自身が支払った。会食費用は一人当たり5,000円だった。

借方金額貸方金額
会議費5,000円普通預金5,000円

出張中のコピー代の勘定科目

出張中で急遽資料を用意するために印刷を行った場合などの費用は日当の範囲内に含まれることが多いので、経費精算対象外とすることが一般的です。

出張先へのお土産代の勘定科目

出張で訪問先のお客様にお土産を用意する場合は、「交際費」として仕訳します。

例:出張にあたりお客様用にお土産を購入した。購入費用は出張者自身が支払った。お土産に要する費用は5,000円だった。

借方金額貸方金額
交際費5,000円普通預金5,000円

まとめると、出張費は、基本的には勘定科目「旅費交通費」として処理し、取引先との会食が発生した場合は、「交際費」として処理すると考えればよいでしょう。

経費の内容出張費の区分勘定科目

新幹線・飛行機の交通費用

出張に伴う交通費

旅費交通費

出張先でのレンタカー費用

出張に伴う交通費

旅費交通費

ホテルの宿泊費用

宿泊費

旅費交通費

訪問先へのお土産

食事代・接待代

交際費

取引先との会食

食事代・接待代

交際費

タクシー・送迎

出張に伴う交通費

旅費交通費

出張者の昼食

出張手当

旅費交通費

現地でのコピー代

出張手当

旅費交通費

出張費は課税?非課税?

国内出張における消費税の取り扱い 

新幹線・飛行機の移動費用や宿泊費用は旅費交通費として仕訳されます。これらの費用は実費弁償と考えられるため、通常の経費と同じように損金算入することができ、非課税です。同様に、出張手当は、本来会社が支払うべき費用を従業員が立て替えたと扱われ、課税されることは法律上適さないと判断されています。一方、取引先との会食やお土産については、交際費として仕訳されることが多く、課税対象となります。

まとめると、交際費に関しては課税対象であり、その他の費用は非課税と整理できます。

海外出張における消費税の取り扱い 

海外航空券や海外ホテルはそもそも国内の取引ではないため、不課税になります。ただし、海外出張であっても、国内で消費される物品・サービスに関しては課税の対象となります。例えば、海外航空券には、国内空港施設使用料という費目があり、こうした費用は課税対象となります。

海外航空券には消費税がかかる?海外出張と消費税の関係を解説

参考:非課税とされる旅費の範囲|国税庁

出張費を非課税にするために整備すべきこと

出張経費の中で旅費交通費と仕訳される費用は非課税になりますが、非課税とするためには所定の手続きが必要です。ここでは、出張費を非課税として処理するための注意点をお伝えします。

出張旅費規程を整備し、規程内に明記する

出張費用は、出張旅費規程に定義し、支給手続きを含めて記載することで、出張費として非課税処理することが可能です。

出張手当も同様に、出張旅費規程に整備しなければ、出張時の日当として認められません。また、出張手当を高額にしすぎると、非課税として認められないので注意が必要です。

出張報告の徹底

出張経費については、税務署によるチェックが入る場合があります。そういった場合、出張者に出張精算書や出張報告書を作成しておくことで、出張の正当性を主張することが可能です。出張が多い企業ほど、チェックが入る可能性が高いので気を付けましょう。

出張報告について知りたい方はこちらをご覧ください。

出張報告書を効率的に作成する方法。記載サンプルあり。

経費精算プロセス

出張旅費の精算

続いては、出張旅費の精算プロセスについて解説します。出張旅費の精算において確認すべきは、精算の流れ、出張旅費精算書の記載内容、精算内容の確認方法などが該当します。以下では、確認すべき事項について解説します。

旅費精算の流れ

旅費精算の基本的な流れは以下の通りです。なお、1のプロセスについては、金額が大きく、かつバラツキが大きい海外出張のみ適用する企業もあります。旅費精算に関する一連のプロセスは経費精算ソフト内で行うケースも多いです。

  1. (交通費や宿泊施設など予め分かっていることは)出張申請にて事前承認を得る
  2. 購入時または利用時に領収書を受け取る
  3. 出張精算書を提出する
  4. 経理部門が内容を確認し、経理処理を行う
  5. 従業員に精算金額を支払う

出張費の立替を出張者はどう考えている?出張精算業務をなくす方法を解説

出張旅費精算書に必要な項目

Step3の出張精算書にはどのような記載内容が必要でしょうか。具体的な記載項目としては、出張に関する基本的な情報(例:出張期間や目的地など)、宿泊料金・日当、交通費・その他費用の3つに分けることができます。なお、海外出張では現地通貨で立て替えているため、会社が定めた為替レートで変換したうえで精算を行いましょう。

出張後の旅費精算の流れや注意点を解説します(旅費精算書のテンプレートあり)

出張旅費精算書の提出にあたっては領収書の添付が求められます。領収書に関してはオンライン予約においては購入時にサイト内で取得する方法が一般的ですが、宿泊費についてはホテルのチェックアウト時にもらうこともできます。また新幹線についても購入時に受け取ることを忘れないようにしましょう。なお、宛名については個人名ではなく、原則会社名となるので気を付けましょう。

出張時の領収書の宛名の書き方やもらい方、紛失時の対処法を紹介

なお、企業によっては出張者の立替負担を軽減するために小口現金を活用している場合もあろうかと思います。小口現金の活用は出張者にとっては有難い仕組みである反面、会計上の処理や現金管理などの負担があるので気を付けましょう。帳簿と管理している金額が合わず、金額の再チェックを行ったといった事例はよく聞く話です。小口現金による出張精算を行う場合は事前に管理体制を整えましょう。

小口現金による出張費精算の流れと注意点について解説します

出張旅費の精算にあたっての注意点

出張者から精算書が提出されたら経理部門によるチェックが始まります。事前申請を行っている場合は、申請時の稟議書の内容と齟齬がないか確認しましょう。その他のチェックポイントとしては、社内の旅費規程を満たしているかも確認しましょう。また、中には経費を水増しして請求するケースもあるため、不正等がないかも確認しましょう。

出張精算時に気を付けるべき不正経費とは?防止策と対処方法について解説

出張旅費精算の効率化

出張旅費の精算は、出張者と経理部門の双方が関わり、負担の大きい業務と言えます。特に海外出張では外貨での立替があり、負担は非常に大きなものとなります。加えて、紙媒体で運用している場合は、書類の管理コストも発生します。そのため、できる限り電子化し、システム上で処理するように心がけましょう。

海外出張の経費精算が楽になる方法。経費精算のポイントを解説します。

インボイス制度の影響

近年、無視することができないのがインボイス制度です。インボイス制度の導入により社内で管理すべき書類や情報に大きな変更がありました。例えば、宿泊施設に関してはインボイス適格番号の添付が求められます。ただし、出張旅費特例により、特定の条件を満たした出張費用は諸々の添付が免除されています。

インボイス制度における出張旅費特例の適用範囲や具体的な経理手続きを解説

また、出張における各種手配を個々人で行っているか、旅行代理店経由で行っているかによっても必要な情報は変わってきます。例えば、旅行代理店の場合は、一括取引になるため個々の宿泊施設等の適格番号管理する必要はありません。経理部門の皆さんは自社の出張手配方法に応じ、正しい経費処理方法を実施する必要があります。

【インボイス×旅行代理店】出張手配におけるインボイス制度対応を解説

その他の注意点

現地に工場などがあり、長期的に滞在する従業員がいる企業は、短期滞在者免税(183日ルール)を把握しておく必要があります。短期滞在者免税(183日ルール)とは、日本と租税条約を締結している国において短期滞在者免税(183日ルール)の要件を満たせば、出張した国での課税は免除される制度のことです。上記を把握していないと二重課税になる場合があるので気を付けましょう。

短期滞在者免税(183日ルール)とは。適用用件や日数カウント方法を解説

出張管理システムを活用すれば会計時の仕訳も簡単に出張旅費精算書に必要な項目

出張管理システムでは、手配した航空券や宿泊施設、手配手数料について課税・不課税が分類された状態で表示されます。また、システムによってはそれらのデータをエクセル形式等でダウンロードすることが可能です。ダウンロードしたエクセル形式を会計ソフト用に項目を入れ替えれば、会計システムにインポートすることができ、作業効率は格段にあがるでしょう。

出張管理システムについてもっと知りたい方はこちらをご覧ください。

出張管理システムの基本:搭載機能や導入メリット、導入プロセスを解説します

まとめ

いかがでしたか。冒頭でお伝えした通り、出張経費は、企業における経費の大半を占めます。そのため、税のインパクトも大きく、正しい処理が求められます。また、出張者と経理部門の双方にとって負担が大きいため、社内の旅費精算プロセスを整理し、効率的な運用を心がけましょう。特に、出張管理システムを使うと業務効率が大幅に軽減するため、出張件数の多い企業はシステム導入を検討することをお勧めします。

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