もくじ
イギリスは世界屈指の金融センターであるロンドンを筆頭に、製造業やテクノロジー産業の拠点が点在する、日本企業にとって極めて重要なビジネスマーケットです。
近年のイギリス出張では、EU離脱後の入国審査の変更や、デジタル化された検疫・ビザ制度など、最新の渡航ルールを正しく理解しておくことが、スムーズなビジネス遂行の鍵となります。
まずは、主要な目的地と、渡航前に必ず確認すべき基本要件を整理しましょう。
イギリス出張において、主要なゲートウェイとなる空港と、ビジネスの拠点となる都市は以下の通りです。
| 都市 | 主な産業・役割 | 利用される主な空港 |
| ロンドン | 金融(シティ)、テック企業、官公庁が集まる中心地。 | ガトウィック空港(LGW):欧州域内便が豊富。 |
| ロンドン | 金融(シティ)、テック企業、官公庁が集まる中心地。 | ガトウィック空港(LGW):欧州域内便が豊富。 |
| バーミンガム | 製造業、自動車産業の中心地。展示会会場(NEC)も有名。 | バーミンガム空港(BHX) |
| マンチェスター | 北部の経済拠点。メディア、IT、スポーツビジネスが盛ん。 | マンチェスター空港(MAN) |
| エディンバラ | スコットランドの首都。金融、エネルギー産業の本拠地。 | エディンバラ空港(EDI) |
ロンドン市内への移動は、ヒースロー空港から「ヒースロー・エクスプレス」を利用するのが最も効率的ですが、近年は「エリザベス・ライン」の開通により、シティ方面へのアクセスも格段に向上しました。目的地に合わせて最適な交通手段を事前に選定することが、出張者の負担軽減に繋がります。
イギリス入国から帰国時まで有効なパスポートが必要です。ただし、不測の事態(フライトキャンセルや滞在延長)に備え、「6ヶ月以上」の有効期限が残っている状態での渡航を強く推奨します。
日本国籍のパスポート保持者が、会議、商談、視察などの一般的なビジネス目的で短期滞在(6ヶ月以内)する場合、事前のビザ取得は原則不要です(Standard Visitor Visaの枠組み)。ただし、現地で報酬を得る業務や、長期就労を行う場合は適切な就労ビザが必要です。
日本のICパスポート保持者は、主要空港でeゲート(ePassport gates)を利用できます。これにより、入国審査官との面談なしでスムーズに入国可能ですが、システムエラーや特定の条件により有人カウンターへ誘導されるケースに備え、「英文の出張証明書(派遣状)」や「帰国の航空券」を即座に提示できるよう準備しておくのがビザトラブルを防ぐ鉄則です。
日本国籍の出張者がイギリスへ渡航する場合、「6ヶ月以内の短期滞在」かつ「許可されたビジネス活動」であれば、事前のビザ(査証)取得は不要です。
しかし、2025年1月8日より、ビザが免除されるすべての日本人渡航者に対し、電子渡航認証(ETA)の取得が完全義務化されました。 これを忘れると、日本出発時のチェックインすら拒否されるため、管理者の方は特に注意が必要です。
これまではパスポートのみで入国できましたが、現在は渡航前にオンラインで「ETA(Electronic Travel Authorisation)」を申請し、承認を得る必要があります。
【管理者のチェックポイント】
ETAは一度取得すれば期間内なら何度でも渡航可能です。ただし、パスポートを更新した場合は、古いパスポートに紐付いたETAは無効になります。出張者のパスポート更新タイミングと重ならないか必ず確認してください。
「商用目的」として認められる活動範囲は意外と広く設定されています。以下の範囲内であれば、Standard Visitor(短期訪問者)として入国可能です。
以下の活動が含まれる場合は、短期滞在であっても「就労」とみなされ、別途ビザが必要になる可能性が高くなります。判断が難しい場合は、専門家や大使館への確認が必要です。
日本のパスポート保持者は「eゲート(自動ゲート)」を利用できるため、審査官と話す機会は減っています。しかし、機械の故障やランダムピックアップで有人カウンターに回された際、「不法就労の疑い」を持たれないための備えが不可欠です。
以下の内容を記載した英文の「出張証明書(Letter of Assignment)」を1枚持参してください。
ETIAS(エティアス)はいつから必要?2026年導入予定の最新情報解説
イギリス出張の準備は、大きく「公的書類の不備をなくすこと」と「現地のビジネス環境に合わせること」の2フェーズに分かれます。
企業側は、出張者が現地でトラブルに巻き込まれたり、入国拒否されたりするリスクを最小限に抑える義務(安全配慮義務)があります。
入国審査や移動をスムーズにするため、以下のものは必ず「手荷物」に入れてください。
イギリス独自のビジネス習慣やインフラに対応するための準備です。
VisaやMastercardの「タッチ決済(コンタクトレス)」、またはApple Pay/Google Payが必須です。
公共交通機関(地下鉄・バス)もこれらで乗車します。
【通信環境について】 ロンドン市内のWi-Fi環境は整っていますが、移動中の地図確認やタクシー(Uber/Free Now)の手配を考えると、eSIMの事前設定が最も効率的です。
物理SIMの差し替えが不要なため、紛失リスクを抑えられます。

日本のICパスポート保持者(10歳以上)は、原則として自動化ゲート「eゲート(ePassport gates)」を利用できます。
【注意】入国スタンプが必要な場合
eゲートを利用するとパスポートにスタンプが押されません。経理上の理由等でスタンプが必要な場合は、あえて有人カウンターに並び、審査官に「I would like an entry stamp, please.」と依頼する必要があります。
掲示板で搭乗便のターンテーブル番号を確認し、荷物をピックアップします。万が一、荷物が出てこない(ロストバゲージ)場合は、近くの「Lost Luggage」カウンターへ行き、航空券の半券(バゲージタグ)を提示して手続きを行ってください。
手荷物を受け取ったら、以下の3つの通路のいずれかを通って出口へ向かいます。
| 持ち込み制限・注意点 | 詳細 |
| 食品の持ち込み | 日本から肉製品(レトルト、カップ麺の具材含む)や乳製品を持ち込むことは、原則として禁止されています。 |
| 商業用物品 | サンプル品や展示会用の機材を持ち込む場合、事前のオンライン申告や「ATAカルネ」が必要になるケースがあります。 |
| 免税範囲(2025年) | その他物品(お土産等)の免税範囲は£390までです。これを超える場合は申告が必要です。 |
【オンライン申告の活用】 近年、イギリス税関(HMRC)はオンラインでの事前申告を推奨しています。免税範囲を超える持ち込みがある場合は、到着の72時間前からオンラインで支払いを済ませておくと、空港での手続きが非常にスムーズになります。
イギリス最大の玄関口であるヒースロー空港からロンドン市内への移動は、「スピード」「コスト」「目的地への直通性」のどれを優先するかで最適な手段が異なります。
2025年現在、すべての公共交通機関(鉄道・地下鉄・バス)で非接触型決済(コンタクトレス決済)が利用可能であり、切符を券売機で買う必要はほとんどありません。
| 手段 | 所要時間(市内まで) | 特徴・ビジネス利用のメリット | 料金目安(片道) |
| ヒースロー・エクスプレス | 約15分 | パディントン駅までノンストップ。車内Wi-Fi・電源完備で移動中も仕事が可能。 | £25〜(事前予約で£10〜) |
| エリザベス・ライン | 約30〜45分 | シティ(リバプール・ストリート)やカナリー・ワーフへ直通。空調完備で快適。 | 約£13.90〜 |
| 地下鉄(ピカデリー線) | 約50〜60分 | 料金は最安。ロンドン中心部の主要駅に多く停車するが、混雑しやすく荷物が多いと不便。 | 約£5.80〜 |
※2025年現在、ビジネスパーソンに最も選ばれているのは**「エリザベス・ライン」**です。ヒースロー・エクスプレスより安価でありながら、乗り換えなしで金融街のシティや東部の再開発地区(カナリー・ワーフ)まで到達できるため、タイトなスケジュールの出張には最適です。
荷物が多い場合や、複数人での移動、ホテルへ直行したい場合に適しています。
イギリスの公共交通機関では、切符を買うよりも「Pay as you go」(乗った分だけ後払い)が主流です。
イギリスでのビジネスを円滑に進めるためには、日本とは異なる「距離感」と「マナー」を理解しておく必要があります。また、近年の治安情勢やチップのデジタル化についても押さえておきましょう。
イギリスのビジネス文化は「礼儀正しさ(Politeness)」と「効率性」のバランスで成り立っています。
キャッシュレス化が進んだ現在、チップの支払い方も変化しています。
イギリス(特にロンドンなどの大都市)の治安は、日本と比較すると注意が必要です。
1日平均200件以上の盗難が発生しており、警察も対策を強化していますが、個人の防衛策が不可欠です。
ビジネスバッグを足元に置くのは、置き引きの格好の標的となります。
夜間の単独行動は避け、移動にはUberなどの配車アプリを活用することを推奨します。
【出張管理者へのアドバイス】 出張者が現地でスマートフォンの盗難に遭うと、二要素認証ができなくなり、社内システムへのアクセスや連絡手段がすべて遮断されるリスクがあります。
2025年2月には盗難スマホの追跡に関する新法案も提出されるなど対策が進んでいますが、まずはデバイス紛失時のプロトコル(リモートロックやSIM停止の手順)を事前に共有しておくことが、現代の安全配慮義務と言えます。
イギリス出張を終えて日本へ帰国する際、出国審査の手続き自体はスムーズですが、「免税(VAT還付)の廃止」と「滞在期限の自動管理」については、最新の状況を正しく理解しておく必要があります。
イギリスには、日本のような「審査官による対面の出国審査」は原則としてありません。パスポートへの出国スタンプも押されませんが、航空会社の搭乗データを通じて内務省(Home Office)に出国記録が自動的に送られます。
空港で手続きをすることはできません。
ただし、自身で持ち帰る場合は免税対象外となります。
出国審査がない分、セキュリティチェック(手荷物検査)に時間がかかるため、出発の3時間前には空港に到着しておくのが鉄則です。
「うっかり」であっても、許可された滞在期限を超えて滞在することは重大な違法行為(オーバーステイ)となり、将来のビジネス渡航に深刻な影響を及ぼします。
2025年より運用されている「Border Crossing System」により、すべての出入国日はデジタル記録されており、1日でも超過すると即座にフラグが立ちます。
また、万が一に備え、管理者は出張者の滞在期限をカレンダー等で共有管理しておくことを推奨します。
【管理者のチェックポイント】 出張者が現地のプロジェクト延長などで滞在を延ばす場合、「ETAがあるから大丈夫」と安易に判断せず、入国から何日目かを必ず算出してください。
イギリス政府は2025年末にかけて入国管理をさらに厳格化しており、ルール遵守は企業のコンプライアンス上、極めて重要です。