今回は、ベトナム出張における出入国とビザや現地情報について紹介します。なお、規定や手続きは変更となる場合がありますので、最新情報は下記のリンク等にて確認しましょう。(※2025年12月現在の状況です。)
もくじ
近年、製造業のみならずITオフショア開発やDX推進の拠点として、日本企業にとってベトナムの重要性はますます高まっています。スムーズなビジネス遂行のためには、ベトナム特有の南北による都市特性の違いや、厳格化する入国ルールを正しく理解しておくことが不可欠です。
ベトナム出張では、大きく分けて「北部(ハノイ)」「南部(ホーチミン)」「中部(ダナン)」の3エリアが主要な目的地となります。
| 都市名 | 主要空港 | 特徴・主な産業 |
| ハノイ | ノイバイ国際空(HAN) | ベトナムの首都。政治の中心地であり、北部工業団地へのアクセス拠点。 |
| ホーチミン | タンソンニャット国際空港 (SGN) | 経済の最大都市。商業、サービス業、ITスタートアップが集中。 |
| ダナン | ダナン国際空港 (DAD) | 近年ITオフショア拠点が急増。リゾート地としての側面も持つ。 |
ベトナムは比較的入国しやすい国ですが、ビジネス目的(出張)の場合は、観光目的とは異なるルールが適用されるケースがあるため注意が必要です。
ベトナム入国時点で「6ヶ月以上」の有効期間が必要です。6ヶ月を切っている場合、日本の空港で搭乗を拒否されるリスクがあるため、更新時期の確認は必須です。
日本国籍を保有し、滞在期間が45日以内であれば、観光・ビジネス目的を問わずビザなしでの入国が可能です。
注:かつて存在した「前回の出国から30日以内の再入国にはビザが必要」というルールは撤廃されました。
45日を超える滞在や、現地での本格的な業務に従事する場合は、オンラインで申請可能なe-Visa(電子ビザ)の取得が一般的です。現在は最長90日までの滞在が認められています。
入国審査時に「ベトナムから出国する航空券(eチケット)」の提示を求められることがあります。片道航空券のみでの入国は原則認められないため、必ず往復分をセットで手配しましょう。
ベトナムへのビジネス渡航において、まず確認すべきは「滞在日数」です。日本国籍保持者には手厚い免除措置がありますが、商談や現地調査、会議への出席など、目的や期間に応じて適切な選択が必要になります。
日本国籍の方は、以下の条件を満たす場合に限り、ビザなしで入国・滞在が可能です。
以前は「前回のベトナム出国から30日以上経過していないとビザなし再入国は不可」という制限がありましたが、現在は撤廃されています。近隣諸国(タイやシンガポールなど)への周遊を伴う出張でも、その都度ビザなしでの入国が可能です。
45日を超える長期出張や、マルチプル入国(期間中に何度もベトナムに出入りする)が必要な場合は、e-Visaを取得するのが一般的です。
滞在が45日を超える場合、または現地で報酬を伴う労働に従事する場合は、目的に応じたビザの取得が必須となります。
46日以上90日以内の滞在であれば、オンラインで申請可能なe-Visaが便利です。商用(Business)目的での取得が可能で、シングル(1回入国)だけでなくマルチプル(複数回入国)も選択できます。
ベトナム国内の企業や団体が保証人(スポンサー)となり取得するビザです。現地法人との会議や契約締結など、本格的なビジネス活動を行う際に利用されます。
ベトナムに長期間駐在し、現地で就労する場合に必要です。取得には、原則として「労働許可証(ワークパーミット)」の取得が前提となります。
ベトナム国内に資本出資を行う投資家や弁護士などが対象となるビザです。
ビザの規定は予告なく変更されることがあるため、渡航前には必ず最新の一次情報を確認するよう管理者に周知してください。
駐日ベトナム社会主義共和国大使館(東京)
公式なビザ申請窓口であり、最新の必要書類や手数料を確認できます。
現地での法改正や安全情報、日本人の入国に関する特例措置などが日本語で告知されます。
ベトナム入国管理局(Immigration Department)
e-Visaの申請および入国審査に関するルールを管轄する機関です。
一般的な「出張(商談、会議、市場調査)」であればビザ免除やe-Visaで対応可能ですが、現地で直接的な労働に従事する場合や、機材の据え付け・修理などを行う場合は、現地の受け入れ企業を通じて正式な商用ビザ(DNビザ)や労働許可証(ワークパーミット)の手配が必要になるケースがあります。
特に、工場の現場等で作業を行う場合は、入国審査ではなく「現地での抜き打ち検査」で指摘されるリスクがあるため、管理者は現地の法律事務所やパートナー企業に事前確認を行うのが安全です。
ベトナム出張を成功させるには、入国準備だけでなく「現地での決済」や「トラブルへの備え」が重要です。企業担当者と出張者、それぞれのタスクを整理しました。
社員の安全を守り、コストを最適化するための必須項目です。
ベトナムでは高度な医療を受ける場合、医療費が非常に高額になるケースがあります。提携病院での「キャッシュレス診療」が可能な保険への加入を推奨します。
外務省の「たびレジ」への登録や、緊急時の連絡フロー(現地の日本大使館・領事館の連絡先)を周知します。
テザリング制限のない法人用Wi-Fiレンタル、または海外用eSIMの手配を行います。
ベトナム現地での「不便」を解消するための準備です。
| 項目 | 詳細と注意点 |
| 航空券・ホテル予約確認書 | 入国審査で提示を求められる場合があるため、印刷またはオフライン保存。 |
| 配車アプリ「Grab」の設定 | ベトナム移動の生命線です。日本国内(SMS認証ができる環境)で登録・クレカ連携を済ませておきましょう。 |
| 複数のクレジットカード | 決済エラーに備え、VisaとMastercardを1枚ずつ持つのが理想的。 |
| 現地通貨(ベトナムドン) | 空港で少額(5,000円〜1万円程度)を両替。少額紙幣を持っておくとチップやチップなしの支払いに便利。 |
| 常備薬・虫除け | 現地の薬は成分が強いことがあります。また、デング熱対策として虫除けスプレーは必須です。 |
| 電源変換アダプタ | ベトナムは主にA型・C型です。日本のA型がそのまま使える場所も多いですが、念のためマルチタイプがあると安心です。 |

ベトナムの主要空港(ハノイ・ノイバイ空港、ホーチミン・タンソンニャット空港)に到着してからの流れを解説します。特にホーチミンは、時間帯によって入国審査に1時間以上かかることもあるため、事前のイメージトレーニングが重要です。
飛行機を降りたら「Immigration」のサインに従って進みます。
入国審査を通過したら、モニターで搭乗便のターンテーブル番号を確認し、荷物をピックアップします。万が一、荷物が出てこない場合は、近くの「Lost and Found」カウンターへ向かい、預け入れ荷物のタグ(半券)を提示してください。
特に申告するものがない場合は「Nothing to Declare(緑の窓口)」へ進みます。
税関を抜けると到着ロビーに出ます。ここで以下の対応を済ませるとスムーズです。
ベトナムの主要空港から市内中心部までは、日本と異なり電車(モノレール等)の整備がまだ進んでいません。そのため、移動手段は「配車アプリ」「タクシー」「専用車」の3択となります。
ビジネス出張で最も安全かつ透明性が高いのが、東南アジア大手の配車アプリ「Grab(グラブ)」です。
アプリを使わない場合は、一般的な2社に限定して利用するのが鉄則です。
空港外のタクシー乗り場には各社のスタッフ(ロゴ入りのシャツ着用)が立っています。彼らに行き先を伝え、指定のタクシーに乗せてもらいましょう。
基本はメーター制です。空港使用料(10,000〜15,000ドン程度)が別途加算されます。
深夜の到着や、重要な会食・アポイントへ直行する場合は、宿泊先ホテルによる送迎サービスや、出張管理会社を通じて専用車をチャーターしておくのが最も確実です。空港の出口でドライバーがネームボードを持って待機しているため、迷う心配がありません。
| 空港 | 目的地 | 所要時間 | 目安料金(Grab/タクシー) |
| ノイバイ(ハノイ) | 市内中心部(ホアンキエム湖周辺) | 約45〜60分 | 約30万〜40万ドン |
| タンソンニャット(ホーチミン) | 1区中心部 | 約30〜45分 | 約15万〜25万ドン |
ベトナムでのビジネスを成功させる鍵は、現地の文化を尊重し、信頼関係(フェイス)を大切にすることにあります。日本との違いを押さえておくことで、商談がよりスムーズに進みます。
日本と同様、名刺は両手で差し出し、両手で受け取ります。受け取った名刺はすぐにしまわず、商談中は机の上に並べておきましょう。
ベトナム人は名字(姓)ではなく「名前」で呼び合うのが一般的ですが、ビジネスの場では「Mr.(ミスター)+名前」「Ms.(ミス)+名前」と呼ぶのが安全です。
ベトナム企業はトップダウン型が多い一方、現場の意見も尊重されます。商談の場では、誰が最終決定権を持っているのかを見極めることが重要です。
ベトナムのビジネスにおいて、会食は親睦を深める極めて重要な場です。
「モッ、ハイ、バー、ヨー!」という掛け声で一斉に乾杯するのがベトナム流です。何度も乾杯が行われることがありますが、お酒が飲めない場合は無理をせず、ソフトドリンクで参加してもマナー違反にはなりません。
基本的には「誘った側」が支払う文化です。日本のような割り勘(チェック分割)は一般的ではないため、スマートに支払いを済ませるのがビジネスマンとしてのマナーです。
ホーチミンやハノイの路上では、バイクによるスマートフォンのひったくりが多発しています。歩道でスマホを見ない、カバンは車道側に持たないといった基本的な対策を徹底してください。
高級ホテルであっても水道水は飲めません。必ずペットボトルのミネラルウォーターを使用してください。飲食店で出される氷(中央に穴が開いている製氷機の氷は比較的安全とされる)にも注意が必要です。
バイクの交通量が凄まじく、信号のない横断歩道を渡る場面も多いです。ゆっくりと一定の速度で歩くとバイク側が避けてくれますが、急に走ったり止まったりするのは危険です。
ベトナムのビジネスマンは、メールよりも「Zalo(ザロ)」や「Facebook Messenger」を連絡手段として好む傾向があります。名刺交換の後に「Zaloはやっていますか?」と聞くことで、その後のコミュニケーションスピードが格段に上がります。
ベトナム出張の最終日、スムーズに帰国するために押さえておくべき手続きと、法的リスクを回避するための注意点を解説します。
ベトナムの主要空港は、時間帯によってチェックインカウンターや手荷物検査場が非常に混雑します。
現地で高額な買い物をし、免税対象となる場合は、チェックイン前に「VAT Refund」カウンターへ立ち寄る必要があります。
ベトナム当局は滞在期限に対して非常に厳格です。1日でも期限を過ぎると「オーバーステイ(不法滞在)」と見なされます。
ビザ免除(45日)やe-Visa(90日)の有効期限を、出発前に必ずカレンダーやリマインダーで管理しましょう。万が一、現地で病気やトラブルにより期限内の出国が困難になった場合は、速やかに現地の旅行代理店や弁護士を通じて延長手続き、または出国許可の相談を行う必要があります。
ベトナムでは靴を脱いでの検査が一般的です。また、モバイルバッテリーは必ず機内持ち込み手荷物に入れ、預け入れ荷物には入れないよう徹底してください。
ハノイ、ホーチミン共に国際線ターミナルにはビジネスラウンジが完備されています。プライオリティパスや航空会社のステータスを利用して、搭乗までの時間にメールチェックなどの業務を済ませることが可能です。
ベトナムでは「レッドインボイス(VAT領収書)」が正式な証憑となります。タクシーのレシートやレストランの領収書が社内の経費精算ルールに合致しているか、出発前に再確認しておきましょう。